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2012/5/30

ゲシェフトフューラーの豆知識

事業所委のメールアカウントでストの呼びかけは違法

この記事の要約

ドイツの企業には事業所委員会(Betriebsrat)という従業員の代表機関がある。事情を知らないとうっかり労働組合(Gewerkschaft)と勘違いしてしまうが、両者はまったく別の次元の組織であり、区別しなければなら […]

ドイツの企業には事業所委員会(Betriebsrat)という従業員の代表機関がある。事情を知らないとうっかり労働組合(Gewerkschaft)と勘違いしてしまうが、両者はまったく別の次元の組織であり、区別しなければならない。

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ではどのような違いがあるのかと言うと、労組は各業界の被用者が任意で加入する結社で経営側との賃金交渉やストライキを実施する。これに対し事業所委はあくまでの企業内の一機関であり、経営陣との意見の相違を克服するよう努力することを義務づけられている。賃金交渉やストを行う権利は持たない。

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だが、事業所委のメンバーは通常、労働組合に加入しているため、事業所委員としての活動と組合員としての活動の境界があいまいになることがある。この問題に関する係争でベルリン・ブランデンブルク州労働裁判所が1月に判決(訴訟番号:7 TaBV 1733/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判は病院の経営者がサービス労組Verdiに加入する事業所委員長と事業所副委員長を相手取って起こしたもの。同副委員長は2011年4月11日、2日後に予定されていたVerdiの警告ストへの参加を呼びかける電子メールを全従業員に配信した。メールのアカウントは事業所委員の活動向けに原告雇用主が与えたものだったため、原告はこれを不当として差し止め訴訟を起こした。

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雇用主は第1審で勝訴、第2審のベルリン・ブランデンブルク州労裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官は、事業所委員が労組の組合員としてスト活動すること自体は事業所体制法(BetrVG)74条3項で認められているものの、事業所委員の活動のために雇用主から与えられた物品やメールアカウントを争議活動のために使用することは同条2項に定められた事業所委員の中立義務に違反するとの判断を示した。

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最高裁への上告を認めている。

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