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2012/6/13

ゲシェフトフューラーの豆知識

社用ケータイの私的利用、額が多ければ勤続年数長くても解雇

この記事の要約

多額の横領を行った社員を雇用主は解雇できる。これについてはこのコラムですでに何度か取り上げてきた。では、勤続年数が長い社員、つまり解雇の判断の際に雇用主がその事情を考慮しなければならない社員についてもこの原則が適用される […]

多額の横領を行った社員を雇用主は解雇できる。これについてはこのコラムですでに何度か取り上げてきた。では、勤続年数が長い社員、つまり解雇の判断の際に雇用主がその事情を考慮しなければならない社員についてもこの原則が適用されるのだろうか。この問題に関する係争でヘッセン州労働裁判所が昨年7月に判決(訴訟番号:17 Sa 153/11)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのはルフトハンザ子会社Lufthansa-Service-gesellschaft(LSG)を解雇された社員。解雇通告時の勤続年数は約30年に上っていた。

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雇用主は2009年末~10年初頭にかけて、社員に貸与している携帯電話の利用状況をチェックしたところ、原告社員が私的な通話を会社負担で行っている疑いが浮上。同社員が休暇から戻った10年2月15日に文書を送付し、翌16日からの勤務停止を通知した。3月になって電話会社から送られてきた明細書を見たところ、同社員は国外で休暇を過ごしていた2月2日~12日の11日間だけで564.85ユーロもの私用通話を会社負担で行っていたことが判明したため、4月7日付の文書で即時解雇を通告した。

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これに対し原告は、貸与されていた携帯電話を利用する際に私用の暗証番号でなくうっかり業務用の暗証番号を入力してしまったと主張。また、勤続年数が長いことを訴え、解雇無効を求める裁判を起こした。

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第1審のフランクフルト労働裁判所は、警告処分が妥当だったとの判断を示し、原告勝訴を言い渡した。一方、第2審のヘッセン州労裁は一審判決を破棄。判決理由で裁判官は、原告が計113回もの私的通話を業務用の暗証番号を入力して行っていた事実を指摘。うっかり入力ミスしたという原告の主張には信ぴょう性がないとの判断を示した。また、勤続年数が長いことについても、情状酌量の理由にはならないと言い渡した。最高裁への上告は認めなかった。

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