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2012/6/27

総合 - ドイツ経済ニュース

金融取引税導入の可能性高まる、独与野党は幅広い取引に課税で合意

この記事の要約

金融取引税が欧州連合(EU)域内で導入される可能性が高まってきた。ドイツの主要与野党5党は21日、欧州レベルで同税導入に向けて取り組むことで合意。22日のEU財務相会議では加盟27か国中10カ国が一部加盟国による導入に支 […]

金融取引税が欧州連合(EU)域内で導入される可能性が高まってきた。ドイツの主要与野党5党は21日、欧州レベルで同税導入に向けて取り組むことで合意。22日のEU財務相会議では加盟27か国中10カ国が一部加盟国による導入に支持を表明した。早ければ年内にも立法手続きが終了する見通しだ。

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ドイツでは野党・社会民主党(SPD)と緑の党が財政新条約と「欧州安定メカニズム(ESM)」を議会で支持する条件として政府が同税導入などに向けEU内で働きかけを行うことを要求、与党と協議を続けてきた。新財政条約とESMを議会の3分の2以上の賛成で批准しないと、憲法違反となりかねないという事情がある。

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5党は金融取引税を株式、債権、通貨、デリバティブなど可能な限り幅広い金融取引に課すことで合意した。広範な分野の取引に課税することで、税率を低く抑える狙い。課税に際しては老齢年金や一般投資家、実体経済に悪影響が出ないようにする。

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金融取引税は金融危機に伴うコストを金融業界に負担させるほか、投機的な取引を抑制することを目的としており、EUは当初、世界レベルでの導入を働きかけた。だが、主要国・地域の同意を得られなかったため、EUレベルで導入する方針へと転換。欧州委員会は昨年9月に法案を正式提案した。2014年1月から株式・債券取引に0.1%、デリバティブ(金融派生商品)取引に0.01%の率で課税するという内容で、欧州議会も5月下旬の本会議で、EU域内共通の金融取引税を導入する案の早期成立を促す決議案を賛成多数で採択した。

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ただ、EUでは税制に関する政策決定に加盟27カ国の全会一致が必要。同案にはドイツのほかフランス、スペインなどが支持を表明しているものの、欧州の金融センターである英国が強く反発しており、成立のめどは立ってない。

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このため独与野党は「強化された協力(enhanced cooperation)」手続きを通して同税の実現を目指すことで合意した。9カ国の賛成があれば手続きを開始できるためで、金融取引税実現のハードルは大幅に低下する。このハードルもクリアできない場合は二国間条約を通して実現を目指す。

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10カ国が支持

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22日のEU財務相会議ではEU全体での導入は不可能との決議が行われ、強化された協力を通した同税の実現に道が開かれた。独仏伊西のユーロ圏4大国に、オーストリア、ポルトガル、スロバキア、ギリシャ、ベルギー、スロベニアを加えた計10カ国が少なくとも原則的に支持する意向を表明している。これらの国は今後、どの金融取引を課税対象にするかや税率、税収の用途などの詳細について詰めたうえで強化された協力の適用を欧州委に申請する見通しだ。

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欧州委は申請内容が域内市場ルールに違反していないかを審査したうえで法案を作成、法案はEU27カ国の特定多数決で可決される。オランダ、スウェーデン、ルーマニア、ラトビアは反対の意向を表明しているものの、英国は反対しない考えを示している。

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立法手続きを年内に終了するには7月末までに適用申請を行う必要がある。外交筋の情報によると、同税が導入されるのは早くても2014年になる見通し。課税に向けた技術的な準備に時間がかかるという。

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