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2012/7/4

総合 - ドイツ経済ニュース

債務危機の影響が独自動車業界にも

この記事の要約

独自動車業界の先行き見通しが悪化してきた。南欧諸国の債務危機の影響で欧州市場が低迷しているためだ。米国や中国など欧州域外で好調を維持しているため、独メーカーは伊仏メーカーに比べ良好な状況にあるものの、輸出台数は減少。これ […]

独自動車業界の先行き見通しが悪化してきた。南欧諸国の債務危機の影響で欧州市場が低迷しているためだ。米国や中国など欧州域外で好調を維持しているため、独メーカーは伊仏メーカーに比べ良好な状況にあるものの、輸出台数は減少。これまで好調だったドイツ市場にも減速感が出ており、独自動車工業会(VDA)のマティアス・ヴィスマン会長は3日、「われわれは嵐がより強まる時代に備えなければならない」との見解を示した。

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欧州連合(EU)域内の5月の乗用車新車登録台数は110万6,000台(マルタを除く26カ国)で、前年同月を8.7%下回った。フランスが16.2%、イタリアが14.3%、スペインが8.2%の幅で下落しており、1~5月の累計でも前年同期比7.7%減の544万2,000台へと落ち込んだ。ヴィスマン会長は市場回復の見通しは立たないとしており、当面は縮小傾向が続く公算が高い。2012年通期では5%の減少を見込む。

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減少幅が大きいのは欧州の大衆車ブランドで、仏ルノーは1~5月の実績が19.7%減少、伊フィアット(同17.0%減)、オペル/ボクソール(15.6%減)、PSAプジョー・シトロエン(15.0%減)も2ケタ減となった。オペルは独メーカーで業績が最も振るわず、親会社ゼネラル・モーターズ(GM)は販売好調な姉妹ブランド、シボレーのモデルを稼働率低下に悩むオペル工場で生産させるとの観測もある。

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欧州市場の低迷を受けて、ドイツの上半期の乗用車輸出台数は前年同期比1%減の216万台に後退。国内生産台数も1%減の284万台へと落ち込んだ。VDAは2012年通期の輸出台数を前年比2%減の415万台、国内生産台数を1%減の550万台強と予想している。

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販売低迷の兆候は比較的堅調なドイツ市場にも表れている。独連邦陸運局(KBA)が3日発表した2012年6月の乗用車新車登録台数は前年同月比2.9%増の29万6,722台にとなり、2カ月ぶりに拡大したものの、改善の主因は移動祝日の関係で営業日数が多かったことにある。1~6月の実績をみても前年同期比0.7%増の163万4,401台と伸び率が小さい。前年同期は伸び率が10.5%に達していた。

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韓国勢が躍進、起亜は50%増に

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大衆車ブランドの苦戦は独新車登録統計からもみてとれる。ドイツ車では経営不振のオペルが上半期に9.3%減の11万8,607台へと大きく後退。フォードも4.5%減の11万2,260台と振るわなかった。大衆車ブランドで増加したのはVW(0.9%増の35万7,195台)だけだ。

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一方、高級車は全体的に好調で、ポルシェは23.2%増の1万1,507台と2ケタ台の伸びを記録した。アウディとメルセデスもそれぞれ8.1%増の13万5,071台、5.6%増の14万5,891台に拡大している。BMW/Miniは0.7%減の14万8,811台とやや後退した。

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日本車はスバル(18.5%増の4,494台)とトヨタ/レクサス(10.4%増の4万4,216台)が2ケタ台の成長を確保したものの、他のブランドは軒並み減少。各ブランドの実績はマツダが4.5%減の2万2,705台、日産/インフィニティが5.5%減の3万5,009台、スズキが5.5%減の1万6,951台、ホンダが17.0%減の1万2,508台、三菱が20.3%減の1万3,014台、ダイハツが69.0%減の619台だった。

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日本車以外の主な輸入ブランドでもフィアットは9.7%減の4万888台、プジョーは9.6%減の4万443台、ルノー/ダチアは4.4%減の7万7,517台、シトロエンは2.1%減の3万5,102台、ボルボは1.3%減の1万7,871台へとそれぞれ後退した。

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そうしたなかで存在感を増しているのは韓国車で、起亜は50.0%増の2万7,711台、現代も17.4%増の5万2,830台へと大きく拡大した。価格が手ごろなほか、EU・韓国自由貿易協定が1年前に発効したことが大きい。韓国国際貿易協会(KITA)によると、同国から欧州への乗用車輸出台数はこの1年で40%増えて40万台に達した。

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現代は独市場シェアが3.2%で輸入車3位につけ、同4位のトヨタ/レクサス(2.7%)を0.5ポイント上回っている。

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