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2012/6/27

ゲシェフトフューラーの豆知識

従業員のビデオ監視で最高裁が基準提示

この記事の要約

ビデオカメラを職場内に極秘に設置するのは法律的にみて難しい。従業員のプライバシーを著しく侵害するためだ。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)がこの問題に絡んだ係争でビデオ設置が許される基準を提示したので、ここで取り上げてみる […]

ビデオカメラを職場内に極秘に設置するのは法律的にみて難しい。従業員のプライバシーを著しく侵害するためだ。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)がこの問題に絡んだ係争でビデオ設置が許される基準を提示したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは大手スーパーを解雇された店長代理。同スーパーでは従業員が万引きを行っている疑いが濃厚になったため、雇用主は事業所委員会(Betriebsrat)の同意を得たうえで、2008年12月に計3週間、店舗内に隠しカメラを設置した。その結果、原告が2度にわたり商品のたばこを盗んでいることが明らかになったため、雇用主は即時解雇を通告した。原告は万引きの事実を否認し、解雇取り消し訴訟を起こした。

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第2審のケルン州労働裁判所は撮影されたビデオを裁判証拠として認定し、原告の訴えを棄却した。

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これに対し最終審のBAGは第2審判決を破棄、裁判をケルン州労裁に差し戻した。判決理由で裁判官は極秘のビデオ撮影が認められるのは(1)犯罪行為が行われている具体的な疑いがある(2)ビデオ撮影という踏み込んだ措置を取らないと事実関係を解明できない(3)事実関係の解明と言う目的を達成するための手段としてビデオ監視が行き過ぎた措置でない――の3つの基準をすべて満たしている場合に限られると指摘。ケルン州労裁の審理ではこの点が十分に解明されていないとの判断を示した。

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3つの基準がすべて満たされていれば、ビデオ撮影の内容が裁判証拠として採用されるため、解雇は妥当となる。満たしていない場合は違法収集証拠排除法則(違法な手段で得られた証拠の証拠能力を否定する法理)に基づき解雇が無効となる。

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