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2012/6/27

ゲシェフトフューラーの豆知識

被用者に対する言行不一致は差別の兆候

この記事の要約

被用者に対して雇用主が以前の言行と矛盾する措置や発言を行うと「差別の兆候」と見なされる――。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が21日の判決(訴訟番号:8 AZR 364/11)でそのような判断を示したので、ここで取り上げ […]

被用者に対して雇用主が以前の言行と矛盾する措置や発言を行うと「差別の兆候」と見なされる――。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が21日の判決(訴訟番号:8 AZR 364/11)でそのような判断を示したので、ここで取り上げてみる。

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裁判を起こしたのは労災保険機関に勤務していたトルコ系の職員。2008年1月から12月までの有期契約で採用され、その後、2010年1月末まで契約が延長された。09年9月になって雇用主から契約の再延長も正規職員としての採用も行わない旨を通告された。職場に外国系の職員が少なかったことから、原告は民族的な出自を理由に差別されたとして、一般平等待遇法(AGG)15条の規定に基づき損害賠償請求訴訟を起こした。

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原告は第1審で敗訴したものの、第2審のラインラント・ファルツ州労働裁判所で勝利。被告は損害賠償金2,500ユーロの支払いを命じられた。一方、 最終審のBAGは第2審での審理が不十分だとして、裁判をラインラント・ファルツ州労裁に差し戻した。

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被告雇用主は裁判のなかで、雇用契約を再延長しなかったのは原告の業務能力が低いためだと主張した。だが、被告は10年1月31日付で発行した退職証明書のなかで原告の仕事ぶりについて「完全に満足している」と明記していた。これは業務能力が低いため契約を延長しないとした審理中の発言と矛盾しており、BAGの裁判官は差別の可能性があると判断。ラインラント・ファルツ州労裁に対して、業務能力が低いという被告の発言と、原告の仕事ぶりに満足しているという証明書の文面のどちらが正しいかをはっきりさせたうえで判決を下すよう命じた。証明書の文面が正しいのであれば、民族的出自を理由に差別したことになる。

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