ドイツ連邦カルテル庁は9月27日、自動車燃料業界を対象に独禁法上の新たな調査を開始すると発表した。小売部門を対象とした前回の調査では違法行為が確認できなかったことを受けた措置。今回では川上の製油・物流・卸売に調査のメスを入れ、カルテルなどが行われていないかを本格的に調査する。同庁のアンドレアス・ムント長官は「原油・石油製品の分野における価格の動きがどのように川下に転嫁されるかを正確に調べる」と述べ、厳しい姿勢で情報を収集・分析する意向を表明した。
\カルテル庁は業界全体を対象とした「セクター調査」を実施する。同調査は特定の市場で適正競争が阻害されていると疑われる場合に行われる。
\自動車燃料業界のセクター調査はガソリンスタンド業界を対象に3年間行われ、昨年、最終報告書が公表された。結論は大手石油会社の寡占があり活発な競争が行われていないものの、違法行為は確認できないというもので、カルテルを摘発するという同庁の期待は空振りに終わった。
\カルテル庁はこれを受け、違法行為を摘発するには川上の「ブラックボックス」に調査の光を当てる必要があると判断したもようだ。
\調査はまず10~11月にかけて関連企業を対象にヒアリングを実施。同庁はそれに基づいて質問項目を作成し、年内にアンケート用紙を対象企業に送付する。その後は回答の分析を経て、さらなる調査を行う見通しだ。
\製油・物流・卸売業界では企業間の協力関係が複雑に入り組んでおり、例えば西南ドイツのカールスルーエにある製油所にはシェル、エッソ、BPなど5社が出資している(表参照)。こうした協力関係は外部からは見えにくく、同庁は違法行為の温床になっている懸念があると推測。仮にカルテルなどを摘発した場合は合弁解消を命じる可能性がある。
\大手石油会社に対しては独立系ガソリンスタンドに対し不当に高い価格で燃料を卸しているとの批判もあるため、同庁はこれについても調査を行う。
\石油業界団体は今回のセクター調査に正当な根拠はないとみている。ドイツの製油業界は国際的に激しい競争にさらされ、すでに閉鎖に追い込まれた施設もあるためだ。また、独立系ガソリンスタンド業界団体の関係者は『ヴェルト』紙に対し、石油各社の製油事業が極度に国際化しているため調査は極めて難しいと指摘。結果的に違法行為を確認できない恐れがあると懸念を表明した。
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