ギリシャ財政危機のしわ寄せで、同国の国立病院と取引のある製薬会社が損失を被っている。ギリシャ政府が売掛金の一部を現金の代わりに国債で支払っているためだ。デフォルト(債務不履行)懸念から同国国債の市場価格は額面価格を大幅に下回っており、メルクは約6,000万ユーロの売掛金の3分の1しか回収できず、Biotestも回収額が半分未満にとどまったという。9月25日付『ファイナンシャル・タイムズ(ドイツ版、FTD)』紙が報じた。
\ギリシャ政府は2010年、国立病院の07~09年分の未払い代金を無利子の国債で清算することを一方的に取り決めた。製薬会社にとっては無利息で資金を貸し付けた格好となり、極めて不利な取引だったが、選択の余地はなかったという。しかも同国国債の市場価格はデフォルト懸念からその後、大きく下落した。
\大手製薬メーカーの中で唯一、詳細を公表したメルクは6,000万ユーロの売掛金に対し額面5,560万ユーロの国債を受け取った。このうち1,240万ユーロ分は全額回収できたものの、残り4,320万ユーロ分については今年行われた債務削減(ヘアカット)に伴い価値が810万ユーロに下落。トータルで回収できた額は2,050万ユーロに過ぎなかった。
\Biotestは約2,500万ユーロの売掛金のうち1,350万ユーロを回収できなかった。売上高が4億2,200万ユーロ(11年)の同社にとっては大きな痛手だ。Biotestはこの苦い経験を受け、ギリシャの公立病院との取引をほぼ全面的に停止し、「戦略上の理由から」取引を中止できない2種類の薬剤だけを供給している。取引高は「数千ユーロ」にとどまる。
\メルクは現在も全製品を納入しているが、支払い期限を大幅に短くしたほか、抗がん剤「エルビタックス」は患者の全額自己負担に切り替えたという。
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