欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2013/5/2

ゲシェフトフューラーの豆知識

不採用者への情報開示義務はあるのか

この記事の要約

従業員の採用募集を行った企業は、不採用となった応募者から抗議を受けたり、不採用とした理由の説明を求められることがある。そうした場合、企業はどんな対応をしなければならないのだろうか(あるいは、どんな対応をする必要がないのだ […]

従業員の採用募集を行った企業は、不採用となった応募者から抗議を受けたり、不採用とした理由の説明を求められることがある。そうした場合、企業はどんな対応をしなければならないのだろうか(あるいは、どんな対応をする必要がないのだろうか)。この問題に関する係争で、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が4月25日に判決(訴訟番号:8 AZR 287/08)を下したので、ここで取り上げてみる。

\

裁判を起こしたのはIT企業が2006年秋に実施した採用募集に応募したロシア系の女性IT技術者。1961年生まれのため、応募時点で45歳になっていた。

\

原告は10月に計2回、応募したものの、2回とも書類選考で不採用となったため、性別、年令、民族的な出自を理由とする差別に当るとして、一般平等待遇法(AGG)に基づく損害賠償請求訴訟を起こした。また、被告企業に対し採用した応募者の書類を開示するよう要求した。

\

第1審と第2審は原告の訴えを棄却。最終審のBAGも下級審判決を指示した。判決理由で裁判官はまず、応募者を実際に採用したかどうかや採用基準の開示を義務づける国内法はないとして、被告企業には採用した応募者の書類を開示する義務はないとの判断を示した。また、差別があったとする原告の主張については十分な裏付けを提示されなかったと指摘。被告企業にはAGG22条に基づき差別がなかったことを証明する義務は発生せず、原告に損害賠償の請求権はないとの判断を示した。

\

\

※一般平等待遇法(AGG)22条

\

\

係争当事者の一方(採用応募者や被用者)が差別を推測させる状況証拠を提示した場合、もう一方の当事者(企業などの雇用主)には差別がなかったことを証明する義務が発生する。

\