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2013/5/8

ゲシェフトフューラーの豆知識

ナチスを意味するスタンプ捺印で即時解雇

この記事の要約

従業員がちょっとした失言や不適切な行動を行っても初めてのケースであればせいぜい、警告処分にとどまる。だが、人道上、類例のない犯罪を行ったナチスに関するとなると事情は大きく異なってくる。この問題に関する係争でハム州労働裁判 […]

従業員がちょっとした失言や不適切な行動を行っても初めてのケースであればせいぜい、警告処分にとどまる。だが、人道上、類例のない犯罪を行ったナチスに関するとなると事情は大きく異なってくる。この問題に関する係争でハム州労働裁判所が昨年9月に判決(訴訟番号:15 Sa 782/12)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判は勤務歴40年以上の社員が勤務先の鉄鋼会社を相手どって起こしたもの。同社員は2011年12月7日、出荷する荷物の配達票の裏側に「武装親衛隊 ベルリン(Waffen SS Berlin)」と書かれたスタンプを押した。武装親衛隊はナチスの支配時代に治安組織・諜報組織を傘下に置いた親衛隊(SS)の軍事組織で、ユダヤ人虐殺に深く関与。第二次世界大戦の戦争犯罪を裁いたニュルンベルク裁判で犯罪組織であると宣告されている。

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荷物の送り先であるW1 E1社の社長は翌8日、被告鉄鋼会社に電話をし、配達票に「武装親衛隊ベルリン」のスタンプが押されていたことに抗議。これを受け被告企業は原告から事情聴取を行った。原告は悪意はなかったと弁明したものの、被告は即時解雇を通告した。原告はこれを不当として提訴した。

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第1審のジーゲン労働裁判所は原告の訴えを棄却し、第2審のハム州労裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官は、武装親衛隊のスタンプを業務文書に捺印したことで原告は雇用主の評価を著しく貶めたと指摘。重大な理由がある場合は即時解雇が認められるとした民法典(BGB)626条1項の規定に該当するケースだとの判断を示した。最高裁への上告は認めなかった。

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