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2013/7/31

経済産業情報

食肉解体業者が東欧の移民を低賃金で雇用

この記事の要約

ドイツの食肉解体業者が中東欧の出稼ぎ労働者を不当に低い賃金で働かせているとして、国外から批判の声が高まっている。オーストリアの農産物加工業者連合会は、同国の大手食肉解体業者14社のうち5社が昨年、独食肉加工業者との価格競 […]

ドイツの食肉解体業者が中東欧の出稼ぎ労働者を不当に低い賃金で働かせているとして、国外から批判の声が高まっている。オーストリアの農産物加工業者連合会は、同国の大手食肉解体業者14社のうち5社が昨年、独食肉加工業者との価格競争に敗れ倒産したと指摘、「組織的な搾取労働だ」とドイツの事業者を強く非難している。27日付『ヴェルト』紙が報じた。

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背景には法定最低賃金制度がドイツにないため、同制度を導入している周辺国に比べ労働コストが抑えられているという事情がある。また、労使協定の適用を受ける企業は下請け企業に業務を委託することで、協定賃金の適用を回避している。

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ヴェルト紙の取材に応じたルーマニア人男性Dさんは、豚肉解体独大手の下請け企業(昨年秋に倒産)で働いていた。解体1頭に付き1.31セントが支払われ、月給は1,500ユーロ。同下請企業では「トップクラス」だった。同じ職場で働いていた妻のVさんは、豚1頭当たり0.98セント、フルタイムで働いても1カ月850ユーロほどの給与にしかならないが、「ドイツの他の食肉解体会社でもっと低賃金で働いているルーマニア人を何人も知っている。自分はまだましな方だ」と話す。

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隣国フランスでは法定賃金が時給9.43ユーロと定められている。ベルギーでも食肉解体業務の最低賃金が同12.88ユーロに上る。一方、ドイツの大手食肉解体事業者は下請け企業と業務請負契約を結び、業務を委託。下請け企業は貧しい国からの出稼ぎ労働者を劣悪な条件で働かせる温床となっている。

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ベルギーのラノッテ経済相は、「こうした搾取が業界ぐるみで行われていることは極めて問題だ。欧州連合(EU)の労働規制に明らかに違反している」と批判。同国政府は今年4月、賃金ダンピングと不公正な労働条件について欧州委員会に苦情を申し立てた。

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