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2013/9/4

ゲシェフトフューラーの豆知識

派遣会社でも「社会的選別」は必要

この記事の要約

経営上の理由で整理解雇を実施する際は「社会的選別(Sozialauswahl)」というルールが適用される。これは社会的に弱い立場の被用者の雇用を優先するというもので、解雇保護法(KSchG)1条3項にはその具体的基準とし […]

経営上の理由で整理解雇を実施する際は「社会的選別(Sozialauswahl)」というルールが適用される。これは社会的に弱い立場の被用者の雇用を優先するというもので、解雇保護法(KSchG)1条3項にはその具体的基準として(1)勤続年数(2)年齢(3)被扶養者がいるかどうか、およびその人数(4)重度の障害があるかどうか――という4つが記されている。では顧客企業の要請に応じて社員を派遣する派遣企業でもこの原則が適用されるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が6月に判決(訴訟番号:2 AZR 271/12)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判は派遣会社から解雇通告を受けた社員が起こしたもの。同社員は被告企業のフランクフルト支社に勤務していた。同支社の顧客はK-GmbHとL-AGの2社で、K-GmbHとの間では2010年7月からアシスタントを最大150人、無期限で派遣することを取り決めていた。

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原告はアシスタントの1人としてK-GmbHに派遣され、航空機清掃業務に従事していた。

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K-GmbHは同年9月、原告の業務がなくなったとして原告を10月から派遣しないよう被告派遣会社に通告した。これを受け被告は原告をL-AGに派遣することを検討したが、L-AGから断られたため、原告に対し12月末日付の解雇を通告した。

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これに対し原告は、被告は社会的選別を行わずに解雇を通告したと批判。解雇無効の確認を求める訴訟を起こした。

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1審と2審は原告勝訴を言い渡し、最終審のBAGも下級審判決を支持した。判決理由で裁判官は、K-GmbHとの契約で被告が義務づけられていたのは適切な人材を派遣することであり、特定の被用者を派遣することではないと指摘。たとえK-GmbHから原告の派遣を打ち切るよう連絡を受けたからと言って、社会的選別を行わずに解雇通告したのは不当だと言い渡した。

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K-GmbHに派遣され同等の業務を行う被告企業の社員の間で社会的選別を行うと、原告よりも解雇保護の優先度が低い社員が少なくとも3人いたと指摘している。

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