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2013/9/4

ゲシェフトフューラーの豆知識

整理解雇の回避努力義務で最高裁判決

この記事の要約

雇用主は経営上の理由で被用者に整理解雇を言い渡す前に、被用者が所属する事業拠点ないし、他の事業拠点で引き続き雇用できないかどうかを検討しなければならない。これは解雇保護法(KSchG)1条2項に記されたルールである。では […]

雇用主は経営上の理由で被用者に整理解雇を言い渡す前に、被用者が所属する事業拠点ないし、他の事業拠点で引き続き雇用できないかどうかを検討しなければならない。これは解雇保護法(KSchG)1条2項に記されたルールである。では、雇用主がドイツ国外に事業拠点を持つ場合、雇用主は国外拠点で雇用できないかどうかも検討しなければならないのだろうか。この問題に関する係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が8月29日に判決(訴訟番号: 2 AZR 809/12)を下したので、ここで取り上げてみる。

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裁判は繊維メーカーの従業員が雇用主を相手どって起こしたもの。同社ではチェコの工場で生産した半製品を独ノルトライン・ヴェストファーレン州の工場で完成品に仕上げていたが、雇用主は2011年6月、独工場を閉鎖して生産をチェコ工場に集約することを決定し、原告を含む独工場勤務の従業員に解雇を通告した。

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これに対し原告は、独工場の従業員をチェコ工場で引き続き雇用することを雇用主が検討しなったのはKSchGに抵触すると批判。解雇無効の確認を求めて提訴した。

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1審と2審は原告敗訴を言い渡し、最終審のBAGも下級審判決を支持した。判決理由で裁判官は、KSchGが効力を持つ範囲を定めた同法23条の規定を踏まえると、KSchGが適用されるのは国内の事業所だけだと指摘。特別な事情がない限り、雇用主には国外で引き続き雇用することを検討する義務はないとの判断を示した。

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