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2013/9/11

総合 - ドイツ経済ニュース

電気自動車の価格を各社抑制、来年は国内販売1万台も

この記事の要約

フランクフルト国際モーターショー(IAA)が12日、開幕する。今回は世界35カ国から2年前の前回を86社上回る1,098社が出展。中国企業は前回の13社から129社へと急増し、一気に主要国に仲間入りする。世界初公開の車両 […]

フランクフルト国際モーターショー(IAA)が12日、開幕する。今回は世界35カ国から2年前の前回を86社上回る1,098社が出展。中国企業は前回の13社から129社へと急増し、一気に主要国に仲間入りする。世界初公開の車両・技術は159件で、関心は特に電気自動車(EV)、自動運転技術、小型SUVの3分野に集まっている。

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電気自動車では日本メーカーが先行しており、ドイツ車はこれまで超小型車「スマート」のEVモデルに限られていた。オペルがEVとして宣伝する「アンペラ」はレンジ・エクステンダー(航続距離延長装置)付きのプラグインハイブリッド車であり、純粋なEVではない。

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だが、ドイツ各社はここにきて市場投入の日程を具体化しており、フォルクスワーゲン(VW)は同社初のEV「E-Up」を10月に発売。来年初頭には「ゴルフ」のEVモデルも販売を開始する。BMWは炭素繊維素材を本格採用した「i3」を11月に市場投入する。ダイムラーも「Bクラス」のEVを来年発売の予定。ドイツ勢はEVとハイブリッド車を2014年末までに計16モデル市販する計画だ。

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EVの需要は小さく、ドイツの上半期新車登録台数は2,477台にとどまった。販売価格の高さと航続距離の短さが普及の大きなネックとなっているためだ。

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それでもVWはモジュール生産システムなどを通してE-Upの価格で2万6,900ユーロ(バッテリー込み)を実現。BMWもi3の価格を専門家の事前予想(4万ユーロ程度)を下回る3万4,950ユーロに設定した。現時点では需要が社用車やセカンドカー向けに限られるが、技術革新と量産化の効果で低価格化が進めば、一般消費者にも手が届くようになるとみられている。独自動車工業会(VDA)のマティアス・ヴィスマン会長は「Eモビリティ(電力を動力源とする交通手段・システムの総称)はもはや夢でない。電気自動車はついに道路を走行するようになった」と発言。今後の普及に期待を示した。条件がそろえばEVの国内販売台数が来年にも1万台の大台に乗るとみている。

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EV特許で日本勢の優位揺るがず

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ドイツメーカーはバッテリーの面でも大きな進歩を遂げたようで、技術サービス大手Bertrandtのディートマール・ビッヒラー社長は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に対し、「日本メーカーは欧州・ドイツメーカーに大きく水をあけていると言われてきたが、現在はもはやそんなことはない」との見方を示した。

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ただ、EV関連技術を全体的に見ると、ドイツ勢の劣勢は否めないようだ。国際的な弁護士事務所グリューネッカーの調査データをもとに『南ドイツ新聞』が報じたところによると、2002~12年の10年間にEV関連の特許を最も多く申請したのはトヨタ自動車で、1,134件に上った。現代自動車(同1,026件)、フォード(777件)、ホンダ(769件)、三菱自動車(707件)も多い。これに対しドイツメーカーはダイムラーの193件が最高で、VW(67件)、BMW(59件)は中国の奇瑞汽車(191件)を下回った。サプラーヤーをみても日本勢の優位(日立414件、東芝286件、パナソニック281件、デンソー214件)は揺らがず、ボッシュは160件、シーメンスも124件にとどまった。

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グリューネッカーのイェンス・コッホ氏は、ドイツメーカーはEVの重要特許を押さえていないと指摘。現状を放置すると国際競争力を失うと警鐘を鳴らした。

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コンチネンタルとIBMが提携

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自動運転技術の分野ではダイムラーが国内での試験走行に成功したことを明らかにした。走行したのは創業者カール・ベンツの妻ベルタが125年前に世界初の長距離自動車走行に成功したマンハイム~プフォルツハイム間の約100キロ。コストがかさむ新技術でなく量産化に近い既存の技術を用いて実現できたとしている。

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一方、部品大手のコンチネンタルは10日、自動運転技術分野で米IBMと提携すると発表した。自動運転を個々の車両レベルでなく、車車間通信とビッグデータ、クラウド技術を用いて実現するのが特徴。その時々の交通情報を瞬時に把握・分析して予測情報を各車両に伝達するという大規模なもので、ビッグデータとクラウド技術はIBMが持ち寄る。コンチネンタルは電子部品分野で培ったノウハウを提供する。

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コンチネンタルは自動運転技術の開発に注力しており、同分野の研究開発要員は1,300人に上る。予算も年1億ユーロ以上と大きい。

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EVと自動運転が中長期のテーマであるのに対し、小型SUVは需要が大きく将来性も高い商品として熱い視線を浴びている。今回のIAAには各社が出展しており、熱い戦いが繰り広げられそうだ。

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