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2014/2/5

総合 - ドイツ経済ニュース

小売業界、売上の伸び鈍く 個人消費の重心移動など背景に

この記事の要約

ドイツの小売業界が低迷している。マクロ経済の枠組み条件は良好なものの、業界売上の伸びは鈍く、昨年はインフレ率を下回った。天候など一過性の要因のほか、消費者を取り巻く環境や消費構造の変化が背景にあるようだ。 \ 独小売業中 […]

ドイツの小売業界が低迷している。マクロ経済の枠組み条件は良好なものの、業界売上の伸びは鈍く、昨年はインフレ率を下回った。天候など一過性の要因のほか、消費者を取り巻く環境や消費構造の変化が背景にあるようだ。

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独小売業中央連盟(HDE)が1月31日発表した2013年の業界売上高(自動車販売店、ガソリンスタンド、燃料販売店、薬局を除く狭義の小売店が対象)は前年比1.1%増の4,332億ユーロとなり4年連続で拡大したものの、好調だったのは食料品店と通販に限られた。インフレ率は1.5%に上っており、物価を加味した実質売上は減少した格好だ。時計、宝飾品、書籍販売店は特に振るわなかった。今年は1.5%の成長を見込む。(グラフ参照)

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食料品店の売り上げが伸びたのは、品質や倫理にこだわる消費者が増えているためで、特に有機食材や途上国の労働環境・条件などに配慮した「フェア・トレード」製品の需要が拡大したという。

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通販はネットショップがけん引車となり高い成長が続いており、HDEは同売上高が今年も17%増の387億ユーロと大きく拡大すると予想している。

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ネットショップは実店舗から顧客を奪う形で成長している。HDEが会員企業を対象に実施したアンケート調査によると、過去2年間で来客数が減ったと回答する小売店は57%に達した。このうち「大幅に減った」は17%を占める。

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調査機関IFHが消費者を相手に実施した別のアンケート調査でもショッピング街のある都市中心部を訪れる頻度が減ったとの回答が全体の3分の1に上った。ネットショップ市場が近年、急速に成長していることとの関連が推測される。

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ショッピング街の訪問者数が減少したことで、特売品などの衝動買いが行われる数も減っており、これが実店舗に追い打ちをかけている。

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ただ、実店舗の売り上げが減っても、その分、ネットショップの売り上げが伸びれば、小売業界全体の売り上げが低迷することはない。

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消費者支出の内訳をみると、近年は固定費である電力と医療費の伸びが大きく、電力価格は昨年1年間で約12%上昇した。こうした要因は可処分所得に占める変動費の割合を押し下げている。

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また変動費をみても、自動車販売店、薬局などを除く狭義の小売分野では消費の抑制傾向が続いている。HDEによると、個人消費全体(1兆5,000億ユーロ強)に占める同分野の割合は1990年代初頭の42%から現在は27%へと縮小。消費者はその代わりにバカンスや自動車向けの支出を増やしている。パッケージ旅行業界の売上成長率は昨年、3.7%に達した。

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12月は冬物商品売れず

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一方、ドイツ連邦統計局が31日発表した13年の小売売上指数(暫定値、自動車販売店を除く)は前年を名目で1.4%上回り、物価調整後の実質でも0.1%増加した(表参照)。同指数の増加は名実ともに4年連続。実質増となったのは、HDEの統計と異なりガソリンスタンド、燃料販売店、薬局が含まれているためだ。

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部門別では食料品店が名目3.2%増、実質0.5%増と全体をけん引した。非食料品店はそれぞれ0.1%減、0.5%減と振るわなかった。家具・家電・DIY用品店(名目3.2%減、実質2.9%減)などが強く足を引っ張った。通販はオンラインショッピングが追い風となり名目で6.4%、実質で6.0%の伸びを記録した。

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13年12月の小売売上指数(暫定値)は前年同月を名目で1.4%下回り、物価調整値も2.4%落ち込んだ。営業日数は比較対象の12年12月と同じ24日だった。食料品店は前年同月を名実ともに上回ったものの、非食料品店が振るわなかった。12月としては気温が温暖だったため、冬物衣料やウィンタースポーツ用品の販売が振るわなかったようだ。

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この影響で、大手デパートのカールシュタットでは10-12月期の売り上げが減少。流通大手のメトロもクリスマス商戦(11~12月)が振るわなかった。雑貨・衣料品販売チェーンのStraussは経営破たんの危機に立たされている。

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