ドイツ北部とノルウェー南部間に海底高圧送電線を敷設する計画に黄色信号が灯りだした。プロジェクトを進めるメリットがノルウェー側でなくなっているためだ。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が8日付で報じた。
ドイツ政府とノルウェー政府は2012年、両国間に海底高圧送電線を敷設することで合意した。ドイツは再生可能エネルギー利用の大幅拡大に向けた「エネルギー転換政策」を成功させるには電力の安定供給が欠かせないため、豊かな水力発電能力を持つノルウェーから電力を輸入。ノルウェーも北海のドイツ海域にある風力発電パークで発電された余剰電力を調達する。
両国は海底送電線を2本、敷設する方向で、12年にはそのうちの1本(Nordlink)について建設することを取り決めた。今年着工し、18年から送電を開始する予定だ。建設コストは15億~20億ユーロで、そのうちの50%をノルウェー国営送電会社スタットネット、残りをドイツで送電網事業を展開する蘭テンネットと独政策金融機関KfWが負担する。テンネットはもう1本についても10年以内に稼働させたいとしている。
だが、ドイツでソーラー発電が急増していることで状況は一転。ノルウェー側で送電網敷設のメリットが失われている。
ノルウェーは価格の低い夜間電力をドイツから輸入し、価格が高い昼間電力をドイツに輸出する考えだった。だが、ドイツ南部を中心にソーラー発電が増えたため、昼間電力の価格が下落。欧州電力取引所(EPEX)では夜間電力との価格差(スポット)が09年の1メガワット時当たり約8ユーロから同5ユーロ強へと下落した。
送電網を敷設すると、ノルウェーの国内送電料金が上昇し、同国製造業に打撃を与えるという事情も追い打ちをかける。アルミ大手のハイドロは送電料金が上昇すれば、国内工場を閉鎖し、国外に移転する考えだ。同国はもととも自国需要を賄う発電能力を持っているため、痛手をこうむってまで国際送電線を設置する必要性はないようだ。