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2014/2/12

ゲシェフトフューラーの豆知識

事業所委に警告文書の閲覧権はあるのか?

この記事の要約

従業員を解雇する際は、事業所委員会(Betriebsrat)に理由を説明してその意見を聴取しなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)102条1項に明記された規則で、この手続きなしに解雇を通告することはできない […]

従業員を解雇する際は、事業所委員会(Betriebsrat)に理由を説明してその意見を聴取しなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)102条1項に明記された規則で、この手続きなしに解雇を通告することはできない。

事情の説明には当然ながら文書の提示が必要である。では、事業所委には従業員への警告処分についても雇用主から文書の提示を要求する権利があるのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年9月に決定(訴訟番号:1 ABR 26/12)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は金属加工メーカーの事業所委員会が同社を相手取って起こしたもの。同委は従業員が残業拒否や、指定したトイレのみを利用べしとの指示の無視を理由に警告処分を受けていた事実をつかんだ。勤務時間や職場環境の設定については事業所委に共同決定権があることがBetrVG87条に明記されているにもかかわらず、トイレ使用に関するルールなどは同委に諮ることなく決定されていた。

事業所委はこれを問題視。共同決定権を適切に行使するには過去に作成された警告文書と、これから行おうとしている警告に関する文書を同委が閲覧する必要があるとして、そのコピーの提示を雇用主に要求した。雇用主がこれを拒否したため、提訴した。

原告事業所委は1、2審で勝訴したものの、最終審のBAGは下級審の決定を破棄した。決定理由で裁判官は、警告処分は解雇と異なり共同決定権の対象になっていないと指摘。また、警告文書などを事業所委が閲覧することは処分の対象となった従業員のプライバシーを侵害するものだとの判断を示した。