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2014/2/26

企業情報

Adidas AG―アジアでの大量生産から各市場での少量生産へ―

この記事の要約

スポーツ用品世界2位の独Adidas(ヘアツォーゲンアウラハ)が新たな生産体制の構築に向けたプロジェクトを立ち上げた。中国をはじめとするアジアのメーカーに生産を大量に委託するこれまでの方式を修正。各販売市場で相対的に小さ […]

スポーツ用品世界2位の独Adidas(ヘアツォーゲンアウラハ)が新たな生産体制の構築に向けたプロジェクトを立ち上げた。中国をはじめとするアジアのメーカーに生産を大量に委託するこれまでの方式を修正。各販売市場で相対的に小さな規模で生産する方式を導入する。ゲルト・マンツ研究開発取締役が『ハンデルスブラット』紙に明らかにした。

スポーツ用品業界では賃金が低いアジアメーカーに製造を委託する動きが定着しており、Adidasなどの大手メーカーが自ら生産する製品はほとんどない。委託により生産コストを圧縮できるためだ。

だが、近年はこうした生産体制を取り巻く環境が変化しており、Adidasは新たな生産戦略の構築に乗り出した。

同社が最も問題視するのは世界の工場である中国の人件費高騰だ。同国の賃金は2007~12年に年平均15%のスピードで上昇。13年も約12%上がった。他のアジア諸国でも人件費は上昇傾向にあり、長期的にみるとアジアメーカーに生産委託する事業モデルは維持できない可能性がある。

製造を他社に大量に委託するためには、発売の1年以上前に委託契約を結ばなければならないという事情もマイナス要因となっている。1年後の市場動向を予測することはできず、リスクが大きいためだ。生産地のアジアから消費地である欧州やアメリカ大陸への輸送に時間がかかることも頭痛の種となっている。

さらに、最近は通商障壁が増えており、アジアで安く生産しても販売国で高額関税を課されることがある。ブラジルではシューズ1足に約14ドルの関税がかかるという。

Adidasはこうした事情を受けて、新しい生産体制の構築プロジェクト「Speedfactory」を立ち上げた。各市場でフレキシブルに現地生産するのに必要な前提を作り出すことが目的だ。まずは各製品のバリエーションが極めて多いシューズの分野で16年春までに新コンセプトに基づく生産を開始する。これに伴いサプライヤーは原材料を多くの国の工場に供給することが義務づけられる。