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2014/3/5

総合 - ドイツ経済ニュース

ウクライナ情勢を経済界が注視、対露制裁見合わせを要求

この記事の要約

ウクライナ情勢の緊迫がドイツ経済に影を落としている。これまでのところ実体経済への影響はほとんど出ていないものの、危機が長期化したり、ロシアへの制裁が行われると大きなしわ寄せが避けられないと予想されるためだ。 週明けの3日 […]

ウクライナ情勢の緊迫がドイツ経済に影を落としている。これまでのところ実体経済への影響はほとんど出ていないものの、危機が長期化したり、ロシアへの制裁が行われると大きなしわ寄せが避けられないと予想されるためだ。

週明けの3日、世界各国の株価は急落した。ウクライナ領であるクリミア半島がロシアの実効支配下に入り、ウクライナ情勢の質が国内問題からロシアと米国・欧州連合(EU)との国際的な対立へと発展したためで、ドイツ株価指数(DAX)は終値で3.4%減の9,359を付けた。東欧事業の比重が大きい後発医薬品大手Stada(MDAX採用銘柄)の株価は8%以上落ち込んだ。ウクライナ情勢がひとまず緩和した4日にはDAXが2.46%増の9,589まで回復したものの、情勢の展開次第では再び大きく低下する可能性がある。

中東欧・CIS諸国との貿易振興を目的とする「ドイツ経済界東欧委員会(Ost-Ausschuss der Deutschen Wirtschaft)のライナー・リントナー専務理事はロイター通信に、ロシアは経済制裁を受ければ原油・天然ガス供給などの分野で対抗措置を取る可能性があると指摘。対露制裁を控えるようEUの政策当事者に呼びかけた。ロシアで事業を展開するドイツ企業は6,000社あり、また、ロシア事業に従事するドイツ国内の就労者は20万人に上るという。

独商工会議所連合会(DIHK)のフォルカー・トライアー貿易部長は地方紙のインタビューで、ドイツが輸入する天然ガスの約40%がロシア産である事実を挙げたうえで、ロシアからの天然ガス供給が長期的に停止すると穴埋めできないとの見方を示した。EUのガス需要の30%もロシア産で賄っており、その半分以上はウクライナ経由で供給されている。同部長は対露制裁に対するロシアの対抗措置として◇保護主義的な措置の導入◇ロシアからの利益移転の制限――が考えられるとの見方を示した。

ロシアはドイツ企業の市場としても重要で、機械業界にとっては4番目に大きい輸出先となっている。ドイツ機械工業連盟(VDMA)の主任エコノミストはこれを踏まえ、対露制裁は大きな痛手となるとの見方を示した。自動車大手フォルクスワーゲン(VW)のマルティン・ヴィンターコルン社長は「ウクライナとロシアの情勢を懸念を抱きながら見守っている」と述べた。

メディア報道によると、流通大手のメトロは4月に予定するロシア事業の新規株式公開(IPO)の見合わせを検討している。現在の緊迫した状況下でIPOを実施すると公開益が目減りするためだ。

ロシアは東欧2位の貿易相手国に転落

一方、クリミア情勢が緊迫する直前の2月27日にドイツ経済界東欧委員会が発表したドイツの2013年の対ロシア貿易高は前年比5.4%減の765億ユーロに縮小した。ロシア経済の成長が11年から低迷していることが響いた格好で、東欧最大の貿易相手国はロシアからポーランドに入れ替わった。対ポーランド貿易高は輸入が大きく増えた効果で、4.3%増の781億ユーロに拡大した。(表参照)

同委のエッカルト・コルデス委員長は「ロシアは景気後退局面に入る可能性を排除できない」うえ、ルーブル安でドイツ製品の輸入価格が上昇していることを指摘。独露の貿易高は今年、一段と減少するとの見方を示した。

ドイツからの輸出が最も大きく伸びた地域は中央アジアで、タジキスタンとトルクメニスタンはそれぞれ29%、24%増加した。カザフスタン(8.5%増)、ウズベキスタン(6.9%増)、アゼルバイジャン(6.3%増)も伸び率が高い。

南東欧向けも全般的に堅調で、ハンガリー(同委は南東欧に分類)は7.4%増加。マケドニア(7.3%増)、スロベニア(6.6%増)、モンテネグロ(5.7%増)、ルーマニア(4.8%増)も伸び率が比較的大きかった。

同委はプレスリリースでウクライナ情勢に言及。財政破たんの危機に直面する同国に緊急資金支援を行うようEUと国際通貨基金(IMF)、欧州投資銀行(EIB)に呼びかけた。また、ウクライナをめぐるEUとロシアの対立が長期化すると東欧経済全体に悪影響をもたらし双方に不利益だと指摘。問題解決に共同で取り組むよう促した。

ウクライナ経済についてはロシア市場・エネルギーへの依存が今後も続くとの見方を示した。