パソコン作業の結果、マウス腱鞘炎(けんしょうえん)になった就労者は労災保険の適用を受けることができるのだろうか。この問題をめぐる係争で、ヘッセン州社会裁判所が昨年10月に判決(訴訟番号:L 3 U 28/10)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は1963年生まれの男性が労災保険機関を相手取って起こしたもの。同男性は仕事で長年、パソコン作業を行ってきた結果、肘や手首に炎症(マウス腱鞘炎)が発生したとして、労災保険の適用を申請した。一日の勤務時間の4分の3以上をマウスの細かな操作を伴うパソコン作業が占めていたという。
これに対し、労災機関は、マウス腱鞘炎は労災に該当しないとして申請を却下。原告はこれを不服として提訴した。
原告は1審で敗訴、2審のヘッセン州社会裁も1審判決を支持した。判決理由で裁判官は、短時間に繰り返し手を動かすピアノ演奏などは腱鞘炎の原因となるが、パソコンのマウス操作はそれに比べて負担が大幅に少ないと指摘。専門家の鑑定も踏まえて、労災保険を適用しないのは妥当だとの判断を示した。最高裁への上告は認めなかった。