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2014/3/26

経済産業情報

自家培養軟骨でひざ軟骨損傷再生

この記事の要約

患者から採取したひざ関節の軟骨細胞を培養して損傷部に移植する自家培養軟骨の事業化に、ドイツのバイオテクノロジー企業2社が取り組んでいる。治験に参加して移植治療を受けた患者は少ないものの、実用化できるほどの効果を示している […]

患者から採取したひざ関節の軟骨細胞を培養して損傷部に移植する自家培養軟骨の事業化に、ドイツのバイオテクノロジー企業2社が取り組んでいる。治験に参加して移植治療を受けた患者は少ないものの、実用化できるほどの効果を示しているという。20日付『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が報じた。

関節軟骨は血管がなく修復能力が乏しいため、一度損傷すると完治が難しい。重度の損傷の場合は、人工関節置換術以外に有効な治療法がなく、新たな治療技術の開発が課題となっている。

自家培養軟骨は、ひざ関節軟骨の損傷部近くにある正常な軟骨から軟骨片を採取した後、三次元培養法によって立体的な軟骨組織に培養(約2カ月)してから欠損部位に戻す。この治療法には、◇人工関節置換術のような大がかりな手術が不要◇患者自身の細胞を利用するため拒絶反応リスクが非常に小さい◇損傷部位の形に合わせて培養して移植するため定着率が高い――などの利点がある。

1993年設立のバイオテク企業Co.don(ベルリン近郊テルトウ)は試行錯誤の末に自家培養技術を開発した。13年には1,100件の培養を手がけ、売上高を前年比1.3倍の360万ユーロに拡大。創立以来初の黒字を計上した。

競合のTetec(ロイトリンゲン)も独自の自家培養軟骨NOVOCART(商標登録済み)を開発し、これまでに9,000件の培養軟骨を作成した。

いずれの技術も欧州医薬品庁(EMA)の承認を受けていないものの、Tetecの関係者は「EMAの審査は手間もコストもかかるうえ、適用範囲を限定される恐れもある」と不満を示す。承認を受けていない臨床試験の段階のほうが患者に新たな治療法を試みられるのは皮肉なことだとしている。