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2014/4/30

経済産業情報

ファンドの換金凍結、販売時に説明義務あり=最高裁

この記事の要約

オープンエンド型不動産ファンドが一時的に凍結され場合、出資証券の現金化が拒否されることをファンド販売時に銀行が説明しなかったのは説明義務違反に当たるとして顧客が損害賠償を請求していた係争で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH […]

オープンエンド型不動産ファンドが一時的に凍結され場合、出資証券の現金化が拒否されることをファンド販売時に銀行が説明しなかったのは説明義務違反に当たるとして顧客が損害賠償を請求していた係争で、最高裁の連邦司法裁判所(BGH)は29日、原告の訴えを認める判断を示した(訴訟番号:(XI ZR 477/12、XI ZR 130/13)。判決理由で裁判官は、投資家は法律の定めにより出資証券を原則的にいつでも固定価格でファンド会社に引き取らせることができると指摘。ファンド凍結はこの原則の適用除外に当たり、顧客は出資証券の購入前のそれについて説明されなければならないとの判断を示した。

裁判はモルガン・スタンレーのオープンエンド型不動産ファンド「P2バリュー」を購入したコメルツ銀行の顧客2人が同行を相手取ってそれぞれ起こしたもの。P2バリューはリーマンショック後の金融危機で資金の大量流出が続いたため凍結された。この結果、原告は出資証券を固定価格で同ファンドに買い取れせることができなくなり、証券市場で売却。大きな売却損が出たため、販売時に凍結リスクを伝えなかったコメルツ銀に損害賠償の支払いを請求した。

これに対し、同行は◇ファンド凍結は資金の流出を止め出資者の利益を守ることが目的だ◇ファンドが凍結されることがありうることは常識的に誰でも理解できる――と反論したが、聞き入れられなかった。

オープンエンド型不動産ファンドとは投資家から集めた資金を不動産で運用し、賃貸収入や不動産の売却益を配当の形で投資家に還元する投信。証券取引所に上場する不動産投資信託(REIT)と異なり中途解約ができるため、解約が殺到すると資金運用が難しくなり、最悪の場合ファンド凍結・清算に至る。一方、REITは中途解約できないため、資金流出の危険がなく安定運用できる強みがある。証券取引所に上場されているため、投資家が投資口(REIT法人が発行する証券)をいつでも換金できるのもメリットだ。