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2014/4/30

ゲシェフトフューラーの豆知識

労働安全委員会、事業所委に設置請求権なし

この記事の要約

従業員数が20人以上の企業は職場の安全と衛生について協議する労働安全委員会(Arbeitsschutzausschuss=ASA=)を設置しなければならない。これは労働安全法(ASiG)11条第1文に記された義務である。 […]

従業員数が20人以上の企業は職場の安全と衛生について協議する労働安全委員会(Arbeitsschutzausschuss=ASA=)を設置しなければならない。これは労働安全法(ASiG)11条第1文に記された義務である。この条文をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が15日に決定を下したので、ここで取り上げてみる(訴訟番号: 1 ABR 82/12)。

裁判はハンブルクに本社を置く小売りチェーンを相手取ってシュツットガルト支店の事業所委員会(Betriebsrat)が起こしたもの。同社にはグループ全体を統括するASAがあったものの、同支店の事業所委はそれだけでは不十分だとして同支店内にもASAを設置することを要求して提訴した。

1審と2審は原告の訴えを棄却。最終審のBAGも下級審判決を支持した。決定理由で裁判官は、ASAの設置は雇用主に課せられた法律上の義務であり、労使の協働決定権(Mitbestimmungsrecht)の対象になっていないと指摘。事業所委にASAの設置請求権はないため、ハンブルク本社のASAが不十分かどうかを裁判所は判断しないと言い渡した。

同時に、事業所委は雇用主がASAの設置義務を果たしていない場合、所轄官庁の労働安全庁に苦情を申し立てることができることも指摘した。実際に同義務が履行されていなければ、同庁はASiG12条の規定に基づきASAの設置を命令。雇用主がこれを受け入れない場合は制裁金を科せる。