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2014/5/14

総合 - ドイツ経済ニュース

再可エネ助成分担金の軽減ルール改正法案閣議決定

この記事の要約

ドイツ政府は7日の閣議で、再生可能エネルギー助成分担金の軽減ルール改正に向けた法案を了承した。4月の閣議で承認した再生可能エネルギー法(EEG)の改正案を補完するもので、欧州連合(EU)の補助金ルールを順守しながら電力集 […]

ドイツ政府は7日の閣議で、再生可能エネルギー助成分担金の軽減ルール改正に向けた法案を了承した。4月の閣議で承認した再生可能エネルギー法(EEG)の改正案を補完するもので、欧州連合(EU)の補助金ルールを順守しながら電力集約型企業の競争力を維持することが狙いだ。同軽減ルールの改正により企業負担の大幅な増加が懸念されていたが、政府はこれに配慮して負担軽減総額を年約50億ユーロに据え置いた。

ドイツは再可エネの普及を後押しするため、従来型電力に比べて発電コストが高い再可エネ電力を助成対象としており、再可エネ電力を市場価格よりも高額の固定価格で買い取ることが送電事業者に義務づけられている。同コストは電力料金に上乗せされるため、最終的に消費者や企業などの需要家が負担している(再可エネ助成分担金)。

2012年に施行された現行EEGでは、企業が事業活動を通じて新たに生み出した価値(粗付加価値=GVA=)に占めるエネルギーコストの割合が14%以上の企業に同分担金負担の軽減を認めている。

これに対しては軽減措置を受けられない企業や消費者から批判が出ていた。同措置を受けられない需要家の負担がその分だけ膨らむためだ。同措置に対しては欧州委員会がEU補助金ルール抵触の容疑で昨年末に調査を開始したこともあり、政府はルール改正に乗り出していた。

軽減対象から外れる企業に特例措置

新ルールでは◇EUのエネルギー補助金指令で電力集約型などと規定された業界に属する◇GVAに占めるエネルギーコストの割合が業界により16%ないし20%以上に上る――の2条件を満たしていないと、軽減措置を受けられなくする。現在、軽減措置を受ける企業およそ2,100社のうち最大500社は同基準を満たさないとみられる。

同基準を満たす企業は来年から、(1)電力使用量1ギガワット時(GWh)までは再可エネ助成分担金を満額支払う(2)1GWhを超える分については原則的に満額の15%を支払う(割引率85%)――ことになる。再可エネ助成分担金の満額は現在、1キロワット時(kWh)当たり6.24セントとなっているため、軽減措置を受ける企業は最低で年6万2,400ユーロを負担する。

(2)の1GWhを超える分に関しては、最低の負担額を1kWh当たり0.1セントとするルールを導入する。これは現在の最低負担額(同0.05セント)の2倍に相当する額だ。政府はまた、負担額の上限もGVAの4%とし、電力集約度の特に高い企業では同0.5%とするルールを導入する。

一方、これまで軽減措置を受けられたが今後は受けられなくなる企業に対しては◇電力使用量1GWhまでは再可エネ助成分担金を満額支払う◇1GWhを超える分については満額の20%を支払う(割引率80%)――特例措置を適用。制度改正でコスト負担が急増しないよう配慮する。

所轄大臣のガブリエル経済相は当初、助成分担金の軽減総額を年40億ユーロに引き下げる意向を示していたが、産業界の批判を受け同50億ユーロに据え置いた。経済団体は今回のルール改正案をおおむね肯定的に捉えており、独化学工業会(VCI)のウツ・ティルマン専務理事は「エネルギー集約型産業のコスト負担上昇は吸収できる」との見方を示した。

新しい軽減ルールは2015年から適用される。同ルールの適用を受けるためには、9月末までに所轄官庁の連邦経済・輸出管理庁(BAFA)に申請を行わなければならない。