欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2014/7/2

総合 - ドイツ経済ニュース

欧州委の要求を独政府・与党が無視、再可エネ改正法案を下院で可決

この記事の要約

ドイツの下院である連邦議会は6月27日、再生可能エネルギー法(EEG)改正案を与党の賛成多数で可決した。採決の直前になって欧州連合(EU)の欧州委員会が改正内容に異議をはさんだため、与党はその一部を法案に反映させたものの […]

ドイツの下院である連邦議会は6月27日、再生可能エネルギー法(EEG)改正案を与党の賛成多数で可決した。採決の直前になって欧州連合(EU)の欧州委員会が改正内容に異議をはさんだため、与党はその一部を法案に反映させたものの、それ以外の部分は受け入れ不可能として拒否。欧州委との対決も辞さない姿勢を示している。法案は州政府の代表で構成される連邦参議院(上院)が承認すれば、8月1日付で施行される。

EEGは再生可能エネルギーの普及促進を狙った法律で、同エネルギーへの助成金給付ルールなどが定められている。同法の効果で国内の電力供給に占める再可エネ電力の割合は2000年の6.6%から現在はおよそ25%にまで拡大した。

だが、助成金総額が年240億ユーロに膨らみ、助成負担軽減措置を受けられない企業や消費者の負担が限界に達していることから、政府は法改正に乗り出した。現行の助成負担軽減ルールに対しては公正な競争を阻害している疑いがあるとして欧州委が昨年12月に調査手続きを開始しており、法改正はその意味でも避けられなくなっている。

改正法案作成に向けた作業は欧州委との情報交換や協議を踏まえて行われてきた。独政府はそうしたやり取りのなかで法改正案に対する同委の支持を得ているとみていたが、欧州委は連邦議会での採決直前の6月22日になって法案内容の変更を要求した。

変更要求は主に(1)自家発電の再可エネ助成分担金負担率を改正法案よりも引き上げる(2)EU加盟国から輸入した再可エネ電力を同分担金の課金対象から外す――の2点だ。

独政府・与党は(1)については要求を受け入れ、自家発電の分担金負担率を従来計画の15%から引き上げることを決定。15年に30%、16年に35%、 17 年に40%とすることを法案に盛り込んだ。現在の分担金額(消費電力1キロワット時=kWh=当たり6.24セント)をもとに計算すると、自家発電の15年の負担額は1kWh当たり約1.9セントとなる。

自家発電はこれまで、同分担金を全額免除されてきた。このためコスト削減目的で自家発電を行う企業が増加している。だが、その影響で分担金の負担者数が減少。負担者当たりの分担額が膨らみ、不公平感が強まるという問題が発生しており、欧州委は是正を求めた。

分担金の課金対象となる自家発電設備は今年1月23日以降に設置が許可されたもので、それ以前の設備はこれまで同様、全額免除される。ただ、欧州委は同日以前の旧設備と新設備を平等に取り扱うよう要求しており、政府はその方向で17年に再び法改正に着手する意向だ。一世帯・二世帯住宅などに設置する小規模な太陽光発電設備は今後も分担金が全額免除される。

「助成対象を国内電力に制限はEU法に抵触せず」=ECJ

(2)の要求の背景にはドイツがEU加盟国から輸入した再可エネ電力に対し助成金を支給しないにもかかわらず、助成分担金を課しているという問題がある。欧州委のアルムニア副委員長(競争政策担当)はこれに対し、輸入した再可エネ電力に国内の再可エネ電力と同額の助成金を支給するよう要求。そうしないのであれば、少なくとも輸入再可エネ電力を分担金の課金対象から外すよう要求している。助成金を支給しない一方で分担金を課すのは、域内での関税徴収を禁止したEUルールに抵触するとの立場だ。

これに対し独政府・与党は、輸入再可エネ電力への助成金支給を拒否。また、分担金の免除要求に対しても、助成ルールの土台が揺らぐとして受け入れないことを決めた。二酸化炭素(CO2)を大量に排出する国内の石炭発電所で生産した低コストの電力を北欧などに輸出して、同地の水力発電で得られた電力を再可エネ電力として逆輸入するといった手口が出てくることを懸念している。

EU加盟国から輸入した再可エネ電力に助成金を支給しないことについては、フィンランド企業がスウェーデンのルールを不当として提訴し、欧州司法裁判所(ECJ)が1日の判決でEU法に抵触しないとの判断を示した。助成対象を自国の再可エネ電力に制限することは物の自由移動を保障するEUルールに抵触するものの、助成制度は再可エネの普及を促進し、環境保護・温暖化防止を強化することを目的としており、輸入再可エネ電力の除外は正当化できるとしている。

欧州委と独政府は今後、この判決を踏まえて交渉していくことになる。

政府与党は8月1日付で法案が施行されないとエネルギー集約型企業などが来年の分担金軽減申請を期限内に行えなくなるため、欧州委の要求を一部無視して、議会採決に踏み切った。

10月末で任期切れとなるアルムニア委員が留任しない見通しも計算に入れている。政府は競争政策担当の次期委員と交渉し、譲歩を引き出す考えだ。