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2014/8/20

総合 - ドイツ経済ニュース

5四半期ぶりマイナス成長に、第1四半期の反動と地政学リスク響く

この記事の要約

経済の減速が鮮明になっている。欧州最大の経済規模を持つドイツは第2四半期にマイナス成長へと転落。その影響もありユーロ圏はゼロ成長にとどまった。今後は欧州連合(EU) の対ロシア制裁と、ロシアの対抗措置の影響で景気が一段と […]

経済の減速が鮮明になっている。欧州最大の経済規模を持つドイツは第2四半期にマイナス成長へと転落。その影響もありユーロ圏はゼロ成長にとどまった。今後は欧州連合(EU) の対ロシア制裁と、ロシアの対抗措置の影響で景気が一段と冷え込む懸念が強く、経済研究機関は成長率予測を下方修正していく方向だ。

ドイツ連邦統計局が14日発表した同国の第2四半期の国内総生産(GDP)は物価・季節要因・営業日数調整後の実質で前期比0.2%減(速報値)となり、前期の同0.7%増から大幅に悪化した。マイナス成長は5四半期ぶり(下のグラフを参照)。外需(輸出-輸入)と投資が振るわず、全体が押し下げられた。

比較対象の第1四半期は暖冬で建設需要が前倒しされており、第2四半期の投資の落ち込みは以前から予想されていた。

だが、第2四半期はこのほか、ウクライナ情勢の悪化も大きな足かせ要因となった。経済にもたらす影響が一段と読みにくくなり、新規投資を見合わせる動きが国内外で強まっているためだ。

外需が低迷するは、地政学上のこうしたリスクがあるうえ、新興諸国と足もとのユーロ圏で経済が振るわないためだ。1-6月期の輸出成長率をみると、EUのユーロ非加盟国向けは前年同期比9.2%に達したものの、ユーロ圏向けは2.2%にとどまり、EU域外向けはマイナス0.7%となった。

ユーロ圏をみると、債務危機が特に深刻だったポルトガルやスペインでは経済回復基調が鮮明になっており、スペインは第2四半期のGDP成長率で0.6%を記録。4四半期連続でプラス成長を確保した。ポルトガルも成長率が0.6%に上っている(次ページのグラフ参照)。これらの国では危機を受けて労働規制の緩和など抜本的な改革が行われ、その成果がようやく出てきている。

一方、危機の深刻さが相対的に小さいフランスとイタリアでは構造改革が徹底していない。これが低成長の長期化につながっており、両国の第2四半期の成長率はそれぞれ0%、マイナス0.2%となった。仮に今後、踏み込んだ改革が実施されたとしても、その効果が出るには時間がかかる。両国はユーロ圏でドイツに次ぐ経済規模を持つ大国であり、しばらくはユーロ経済の大きな足かせとなりそうだ。

DAX企業の売上1.6%減に

第2四半期の独成長率はユーロ高によっても押し下げられたとみられる。コンサルティング大手アーンスト・アンド・ヤング(E&Y)の調べによると、ドイツ株価指数(DAX)採用企業の第2四半期の売上高(銀行を除く)は前年同期比1.6%減の3,030億ユーロに後退した。減少はリーマンショックに伴う金融・経済危機の影響が深刻だった09年以降で初めて。ユーロ高は独企業の売上高を目減りさせたほか、価格競争力の低下にもつながり、輸出水準が押し下げられた。

独経済は第3四半期も低迷する見通しで、景気後退局面(2四半期以上続くマイナス成長)に陥るとの見方もある。EUが対ロ制裁を1日付で大幅に強化し、ロシアも対抗措置を打ち出しているためだ。

ドイツ経済研究所(DIW)のフェルディナント・フィヒトナー景気調査主任は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙に対し、今年のGDP成長率を従来予測の1.8%から0.3~0.4ポイント下方修正する考えを明らかにした。独商工会議所連合会(DIHK)は輸出成長率見通しをこれまでの4.5%から3.5%に引き下げた。下方修正は今年2度目となる。

独連邦統計局は今回のGDP統計を、EU加盟国に9月から採用が義務づけられる新基準に基づいて作成した。新基準ではこれまでと異なり、薬物・武器などの違法取引や研究費支出が捕捉されている。