小売市場の変化に歩調を合わせる形で、欧州のショッピングカートメーカーが多品種化による生き残りの道を探っている。店内での使い勝手やデザインなどに対する買い物客の要求が高まっているうえ、欧州債務危機の影響で個人消費が冷え込む国でショッピングカートの需要が激減しているためだ。景気が比較的安定した国でも小売市場は飽和状態にあり、小売店とカートメーカーは顧客の購買行動、品ぞろえ、店舗イメージなどに合わせたカートを提供する必要に迫られている。独dpa通信が報じた。
ショッピングカートの世界的大手である独ヴァンツル(Wanzl)のオーラフ・メルク社長は、「買い物中にカートの車輪が少しでも引っかかって動かなくなるようなことがあれば、客はそれだけで買い物する気を失い、よその店に流れてしまう」と述べ、小売店にとってショッピングカートは今や「どんな店か」を代弁する看板の役割を担っていると指摘する。同社はこうした現状を踏まえ、小売店側の細かなニーズに対応できるよう、モデルの拡充を進めている。
例えば市の中心部にある比較的小型の店舗では単身者の利用が多く、一回当たりの購入量も多くないことから、小型・軽量「XSサイズ」のカートを提供。北欧や米国では2週間分をまとめ買いする客が主流であることから、大量に積み込めると同時にかごの中が整理しやすい大型サイズの製品を中心に販売する。一方、地中海周辺地域では軽量なプラスチック製カートの人気が高い。冬期の湿度が高く、金属製はさびやすいためだ。プラスチック製は金属製より150ユーロほど単価が高い。
ヴァンツルの売上高は2億9,400万ユーロ(2012年)。同社によると、世界のショッピングカートの2台に1台は同社製という。