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2014/8/27

総合 - ドイツ経済ニュース

東西間の貧富差は小さく、都市部-地方間に大きな購買力格差

この記事の要約

財界系シンクタンクのIWドイツ経済研究所は25日、国内各地の物価の違いを加味した貧困統計をドイツで初めて発表した。連邦統計局などが作成するこれまでの貧困統計は各地の物価差を考慮せず、実態を正確に反映していなと判断したため […]

財界系シンクタンクのIWドイツ経済研究所は25日、国内各地の物価の違いを加味した貧困統計をドイツで初めて発表した。連邦統計局などが作成するこれまでの貧困統計は各地の物価差を考慮せず、実態を正確に反映していなと判断したためで、IWは調査結果を踏まえ、東西ドイツ間の貧富の差はこれまで考えられてきたよりも小さいと指摘。格差はむしろ、都市部と地方(都市部以外の地域)の間で大きいとの見方を示した。

所得水準が中央値の60%に満たない市民は一般的に相対的貧困と定義される。これに従うと、ドイツでは単身者で月収870ユーロ未満、子供2人の夫婦で同1,830ユーロ未満が貧困層に該当する(2012年)。この定義に基づいた国内地図をみると、ドイツ西部では貧困率(住民に占める貧困層の割合)が16%を超える地区がほとんどないのに対し、東部では大半の地区が20%を超えている。

こうした一般的な貧困統計には国内各地の物価水準の違いは反映されていない。だが、国内の物価格差は大きく、IWによると、都市部は地方に比べ平均6%高く、東部地区は西部地区に比べ同7%低い。

そうした各地の物価の違いを加味した購買力ベースでみると、大都市のミュンヘンでは貧困ラインが単身者で月収870ユーロから同1,030ユーロへと大きく上昇。東部の中都市シュテンダールでは800ユーロに低下する。

また、東部のチューリンゲン州は所得ベースの貧困率が17%に上るのに対し、購買力ベースの貧困率は14%に低下。独16州のなかで下から3番目となり、貧困層の割合は相対的に低い。

東西ドイツ全体の比較をみても、東部地区は所得ベースの貧困率が西部地区を6ポイント上回るのに対し、購買力ベースではその差が3ポイントまで縮まるという。

「東部の最低賃金は7.9ユーロが適正」

一方、都市部では購買力ベースの貧困率が全国平均22%と高く、地方の同14%を上回った。同貧困率が最も高いのは西部の大都市ケルンで、26.4%に達する。フランクフルト・アム・マインやデュッセルドルフなど経済力が高い都市でも23%を超えている(表を参照)。

都市部で貧困率が高いのは、物価水準が高いうえ、貧困リスクにさらされやすいタイプの世帯も多いためだ。

IWによると、貧困リスクが最も高いのは成員の1人以上が失業している世帯で、そのおよそ50%が貧困層に該当する。これにシングルマザーなどの片親世帯(同割合は約30%)、単身世帯(約25%)、移民系世帯(約25%)が続く。

IWはこれを踏まえ、貧困対策として有効なのは◇失業者の削減◇育児支援の強化◇移民系市民・子弟を対象とした語学・補習支援―― だと指摘。政府の主導で来年から導入される全国一律の最低賃金(1時間8.5ユーロ)は東部地区を中心に賃金の高騰と失業増を招き貧困者の拡大につながると批判した。購買力を踏まえた東部地区の適正な最低賃金は7.9ユーロだとしている。