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2014/8/27

ゲシェフトフューラーの豆知識

被用者が遺骨から金を横領、雇用主に損賠請求権あり

この記事の要約

火葬場の被用者が遺骨から金(きん)を取り私物化していた場合、雇用主は損害賠償を請求できる――。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)は21日の判決(訴訟番号: 8 AZR 655/13)でそんな判断を下した。 裁判は遺骨に残る […]

火葬場の被用者が遺骨から金(きん)を取り私物化していた場合、雇用主は損害賠償を請求できる――。最高裁の連邦労働裁判所(BAG)は21日の判決(訴訟番号: 8 AZR 655/13)でそんな判断を下した。

裁判は遺骨に残る金を横領していた火葬場の元被用者を相手取って同火葬場を運営していた公営企業が起こしたもの。被告は2003年から09年にかけて、火葬後の遺骨から歯の詰め物として使われていた金を取り出し、私物化していた。

この事実は刑事上の捜査の一環で設置されたビデオカメラで判明。警察が被告宅を捜査したところ、横領した金と金を換金化した際の領収書が見つかった。

原告企業はこれを受けて、被告を即時解雇。被告は解雇無効の確認を求める裁判を起こしたものの、敗訴が確定した。

原告はこれとは別に、被告を相手取って損賠訴訟も起こし、2審のハンブルク州労働裁判所は昨年6月の判決で、25万5,610.41ユーロの支払いを被告に命じた。被告はこれを不服として提訴したものの、最終審のBAGは訴えを棄却した。

判決理由で裁判官は、非委託者は委託業務の遂行で得られたすべてのものを委託者に引き渡さなければならないとした民法典(BGB)667条の規定(引き渡し義務=Heraugabepflicht=)を指摘。原告は被告に対し原則的に損賠請求権を持つとの判断を示した。

ただ、それと同時に、原告が火葬場の運営を10年以降、子会社に委託していた事実も指摘。これに伴い損賠請求権が原告から同子会社に移った可能性があるとして、裁判をハンブルク州労裁に差し戻し、この点を審査するよう言い渡した。