鉄鋼系複合企業の独ティッセンクルップ(エッセン)は17日、ステンレス鋼子会社VDMグループを米投資会社リンジー・ゴールドバーグの欧州子会社リンジー・ゴールドバーグ・フォーゲル(デュッセルドルフ)に売却することで合意したと発表した。ステンレス鋼事業からの撤退方針に基づく措置。取引金額は公表しないことで合意した。経済紙『ハンデルスブラット』紙によると、VDMの価値を債務と年金負担を含めて約5億5,000万ユーロと評価して取引を行ったという。売却手続きは監査役会と独禁当局の承認を経て6月初旬に終了する見通し。
ティッセンクルップは2012年、ステンレス鋼部門イノクサムをフィンランド企業オウトクンプに売却したものの、オウトクンプの経営悪化を受けて一部事業を買い戻した。具体的にはイタリアの生産会社アッチャイ・スペチャーリ・テルニ(AST)と同社に属するサービスセンター、および高級鋼材生産会社VDMを再び傘下に収めた。
ティッセンクルップはステンレス鋼事業からの再撤退を目指しており、ASTについても売却先を模索している。
VDMは独西部のヴェルドールに本社を置き、従業員数は約2,000人。ティッセンクルップは今回の売却で評価損1億ユーロを計上する。同時に、純債務と年金負担が数億ユーロ軽減される。