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2015/4/29

ゲシェフトフューラーの豆知識

子会社の企業年金支給額引き上げで最高裁判決

この記事の要約

雇用主は退職者に支給する企業年金の引き上げを物価動向を踏まえて3年に1度、検討しなければならない。これは企業年金法(BetrAVG)16条1項で定められたルールである。雇用主はその際、受給者の利害と自社の経済的な状況をは […]

雇用主は退職者に支給する企業年金の引き上げを物価動向を踏まえて3年に1度、検討しなければならない。これは企業年金法(BetrAVG)16条1項で定められたルールである。雇用主はその際、受給者の利害と自社の経済的な状況をはかりにかけたうえで、「公正な裁量に基づいて(nach billigem Ermessen)」決定を下さなければならない。

では、親会社への利益移転のしわ寄せで経済状況が悪い傘下企業では、グループ全体の良好な利益状況を反映させる形で企業年金の引き上げを行わなければならないのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が21日に判決(訴訟番号:3 AZR 729/13)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判はグループ内の企業とグループ外の企業にサービスを提供する企業の企業年金受給者が同社を相手取って起こしたもの。被告企業はBetrAVG16条1項に基づく3年に1度の支給額引き上げを、2011年1月は見送った。財務が芳しくなかったためである。

これに対し原告・受給者は、被告の財務状況が悪いのはグループ企業間の給付と報酬を定めた協定に基づき利益を親会社に吸い上げられているためだと主張。同協定がある限り被告企業の企業年金支給額は引き上げられないとして、親会社ないし上部会社の良好な財務を反映させる形で年金を支給する(引き上げる)よう要求した。

1、2審は原告の訴えを棄却、最終審のBAGも下級審判決を支持した。判決理由で裁判官は、BetrAVG16条1項に記された企業の「経済的な状況」は「実際の経済状況」を指すと指摘。グループ企業間の給付・報酬協定が現在のものとは違った内容であれば被告の財務は良好だとする、原告の主張は「仮定上の経済状況」に過ぎないと言い渡した。