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2015/5/27

総合 - ドイツ経済ニュース

最低賃金にEU法違反の疑い、欧州委が法的手続き開始

この記事の要約

欧州連合(EU)の欧州委員会は19日、1月からドイツで施行された最低賃金法にはEU法違反の疑いがあるとして、違反調査手続きを開始したことを発表した。国外の運送業者に同国の法定最低賃金を適用していることを問題視、同調査手続 […]

欧州連合(EU)の欧州委員会は19日、1月からドイツで施行された最低賃金法にはEU法違反の疑いがあるとして、違反調査手続きを開始したことを発表した。国外の運送業者に同国の法定最低賃金を適用していることを問題視、同調査手続きの第一段階として「正式通知書簡」を独政府に送付した。

ドイツでは時給を最低8.5ユーロとする法律が1月1日付で施行された。同法はドイツ国内を走行する国外企業のトラック・バス運転手にも適用。同国内の走行については最低でも8.5ユーロが運転手に支払われなければならず、ポーランドなど賃金が低い東欧周辺諸国の企業では人件費が膨らんでいる。

また、入国に先立って税関に輸送計画を提出することも国外運送会社に義務づけており、最低賃金ルールに違反した企業は罰金支払いを命じられる。

ポーランドやハンガリーなど周辺諸国はこれを不当として欧州委に苦情を申し立てていた。

欧州委はドイツの最低賃金導入を高く評価する一方で、ドイツを通行する国外企業の運転手にドイツの最低賃金ルールを適用することは不当に大きな負担をもたらしていると指摘。域内のサービス・モノの移動の自由を保障したEU法に抵触するとの見方を示した。

独政府は正式通知書簡に2カ月以内に回答しなければならない。欧州委は回答内容に説得力がないと判断した場合、ドイツに法改正を促すことになる。

政府は2月、国外企業への最低賃金適用がEU内で問題となったことを受けて、ドイツを通過(トランジット)するトラック・バスであれば運転手に最低賃金を当面、適用しないことを決めた。ドイツを出発ないし目的地とする輸送には従来通りに最低賃金を適用している。入国に先立って税関に輸送計画を提出することを国外運送会社に義務づけるルールも凍結していない。