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2015/6/3

総合 - ドイツ経済ニュース

石油・ユーロ安頼みの成長に経済界が危機感

この記事の要約

独商工会議所連合会(DIHK)は5月28日発表した企業景気アンケート調査レポートのなかで、ドイツの今年の国内総生産(GDP)見通しを引き上げた。上方修正は2月に続き二度目。石油安と欧州中央銀行(ECB)の量的金融緩和に伴 […]

独商工会議所連合会(DIHK)は5月28日発表した企業景気アンケート調査レポートのなかで、ドイツの今年の国内総生産(GDP)見通しを引き上げた。上方修正は2月に続き二度目。石油安と欧州中央銀行(ECB)の量的金融緩和に伴うユーロ安、低金利が前回同様、予測引き上げの理由となっており、DIHKのヴァンスレーベン専務理事は「ドーピングによって人工的に生み出された成長に過ぎない」と指摘。政府はドイツが抱える構造的な問題への対策を十分に打ち出していないと批判した。

DIHKは今回、独GDP成長率を従来の1.3%から1.8%へと引き上げた。成長率1.8%のうち0.7ポイントは石油価格の下落、1ポイントはユーロ安に起因するもので、こうした一過性の要因がなければ成長率は大幅に低くなる見通しだ。

今回のアンケート調査ではこれら経済の押し上げ要因を受けて今後1年間の事業見通しなどが年初の前回調査に比べて改善した(下のグラフを参照)。だが、DIHKのシューマン主任エコノミストは、予想成長率の大きさを踏まえると企業の回答は「控え目」過ぎるとの見方を示した。

今後1年間の経営上の大きなリスク要因を尋ねた質問(複数回答可)では「為替レート」との回答が前回調査の18%から26%へと大きく上昇。「エネルギー・原料価格」も27%から30%へと増えた。現在の景気拡大が主にユーロ安と石油安の上に成り立っていることへの不安感がうかがわれる。

ヴァンスレーベン専務理事はドイツ経済が抱えている大きな問題として◇経済界の投資が他の先進諸国に比べて少ない◇公共インフラの投資が長期間なおざりになっている◇人件費が上昇している◇エネルギーコストが競合国に比べて高い――を指摘。これらの問題の解決に政府が早急に取り組まないと、景気が後退局面に入った時に「痛い目をみる」ことになると警鐘を鳴らした。政府の経済政策をリスク要因とみる企業は43%と極めて多い。

ガブリエル経済相はDIHKの批判を受けて2日、企業投資の税負担軽減策を検討すると表明した。