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2015/6/17

総合 - ドイツ経済ニュース

ハドソンズ・ベイが欧州進出、独カウフホーフを買収

この記事の要約

カナダのデパート大手ハドソンズ・ベイ・カンパニー(HBC)は15日、流通大手の独メトロからデパート子会社カウフホーフを買収することで合意したと発表した。カウフホーフに対しては競合カールシュタットのオナー、レネ・ベンコ氏も […]

カナダのデパート大手ハドソンズ・ベイ・カンパニー(HBC)は15日、流通大手の独メトロからデパート子会社カウフホーフを買収することで合意したと発表した。カウフホーフに対しては競合カールシュタットのオナー、レネ・ベンコ氏も買収提案を行っていたが、HBCは競り勝った格好だ。カウフホーフの取得により欧州市場に進出する。

カウフホーフを債務の引き受けも含めて28億2,500万ユーロで買収する。買収の対象となるのはドイツの全デパート店舗(カウフホーフ:103カ所)、同スポーツ販売店(スポーツアレーナ:16カ所)、ベルギーの全デパート店舗(イノ:16カ所)。このほか、ケルンにあるカウフホーフの統括拠点と、物流センター、倉庫、その他の不動産も取得する。買収手続きは9月末までに終了する見通し。

店舗の閉鎖は行わず、従業員(2万1,500人)も全員、継続雇用する。少なくとも買収後3年間は店舗閉鎖と整理解雇を行わない。HBCのジェラルド・ストーチ最高経営責任者(CEO)は記者会見で、「われわれは事業を拡大したい」と述べ、従業員数を増やしていく考えを示した。

カウフホーフを取得すると、HBCはチェーン店の種類を8つに拡大。店舗数は計464カ所に増える。売上高は130億カナダドル(90億ユーロ)へと増加し、国別の売上比率は米国が44%、ドイツが31%、カナダが23%、ベルギーが2%となる。

将来的にはドイツを起点に欧州事業を強化していく考えで、2013年に買収した高級デパートの米サックス・フィフス・アベニューと、アウトレット店のサックス・オフ・フィフスを同国に開設することも検討する。

カウフホーフについては、オンラインと実店舗をかみ合わせた販売戦略を展開していく考えで、インターネットで注文した商品を顧客が実店舗で受け取ったり、実店舗で試着した衣料品などをオンラインで注文したりできるようにする。店舗のインテリアや照明などに投資することを確約している。

メトロは今回の取引で約16億ユーロを取得。売却益を事業の拡大と債務の圧縮に充てる。今後は経営資源を小売店やレストランなどの事業者を対象とするキャッシュ・アンド・キャリーと家電販売のメディア・ザトゥーン、ハイパーマーケットのレアルに絞り込む。

財務力が決め手に

ベンコ氏は昨年8月、経営不振のカールシュタットを買収した。カウフホーフも取得すると推定1億ユーロ以上のシナジー効果が見込めることから、カウフホーフ買収に名乗りを上げたもよう。

同氏の買収提示額は推定29億ユーロで、HBCと大きな違いはなかった。それにもかかわらず、メトロがHBCを選んだのは、事業コンセプトを評価したほか、財務力も安定しているためだ。

HBCは店舗不動産を原則的に保有して事業を展開しているため、テナント料負担が少なく、経営が安定している。一方、カールシュタットは店舗を借り受けているため、収益力が圧迫されている。ベネコ氏がこれまで保有していたカールシュタットの店舗不動産を売却したこともマイナス材料になったとみられる。

コンサルティング会社BBEの関係者は経済紙『ハンデルスブラット』に、カールシュタットを将来的に存続させるためにはオンライン販売を強化するとともに、商品の品ぞろえを改める必要があると指摘した。HBCはオンライン販売に強いうえ、ドイツにはこれまでなかった目新しい商品を持ち込むためだ。

ドイツの百貨店市場は長期的に縮小が続いており、全国展開するチェーンはカウフホーフとカールシュタットの2社へと淘汰された。背景にはネット通販市場の拡大のほか、品ぞろえが豊富な大型専門店の成長を受けて、食品、衣料品、家電などあらゆる分野の商品を取り扱う百貨店の魅力が薄れていることがある。消費者の倹約志向が強いドイツで外資系小売大手が成功したことはこれまでないこともあり、HBCが同国市場に定着できるかにまずは注目が集まりそうだ。