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2015/8/26

ゲシェフトフューラーの豆知識

過去の雇用関係が事後的に確定、被用者に賃金請求権はあるか

この記事の要約

被用者が労働契約の締結を求めて裁判を起こし勝訴した場合、雇用関係は通常、過去にさかのぼって適用される。そうしたケースでは勤務実績がない過去についても賃金を支給する義務が雇用主に発生するのだろうか。この問題をめぐる係争で最 […]

被用者が労働契約の締結を求めて裁判を起こし勝訴した場合、雇用関係は通常、過去にさかのぼって適用される。そうしたケースでは勤務実績がない過去についても賃金を支給する義務が雇用主に発生するのだろうか。この問題をめぐる係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が19日に判決(訴訟番号:5 AZR 975/13)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は1986年末まで被告企業に勤務していた被用者が同社を相手取って起こしたもの。原告は被告企業の事業売却に伴い87年1月1日付で新設のC社に移籍した。その際、被告企業に復帰することを保障されていた。

C社は2009年に経営破たんし、10年1月末付で清算された。原告はこれを受けて、10年2月1日付の採用を被告企業に要求。これが受け入れられなかったため提訴し、勝訴した。

原告はこれにより、10年2月1日にさかのぼって被告企業の社員となったため、同日から裁判で勝訴した日までの賃金を受け取っていないと主張。被告にその支払いを求めて新たな裁判を起こした。

この裁判では1審と2審が原告勝訴を言い渡したものの、最終審のBAGは逆転敗訴判決を下した。判決理由でBAGの裁判官は、未払い賃金の請求権は雇用関係に実体があることを前提にしていると指摘。事後的に雇用関係が認められた場合は過去の雇用関係に実体がないため、原告には同請求権がないとの判断を示した。