夜勤の最中に計画的に睡眠した被用者を即時解雇処分とすることは妥当だ――。そんな判断をマインツ州労働裁判所が下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は老人ホームで勤務していた介護助手が雇用主を相手取って起こしたもの。同介護助手はもっぱら20時~6時の夜勤に従事していた。
同老人ホームの入居者は2014年4月22日、同介護助手がナースコール(看護師や介護士などを呼び出す装置)に手の届かない位置にベッドを設置したと管理責任者に苦情を伝えた。これを受けて22日から23日の夜勤時間帯に同責任者などが施設内を巡回したところ、入居者の苦情が正しいことが確認されたうえ、原告の介護助手は自ら持ち込んだ椅子に座って眠っていた。
これを受けて被告は雇用の継続に必要な信頼関係が完全に打ち砕かれたとして23日付の文書で原告に即時解雇を通告。念のために解雇予告期間を設けた通常解雇も通告した。
1審のマインツ労働裁判所は通常解雇は妥当だとしたものの、即時解雇は行き過ぎだとの判断を示した。これに対し2審のマインツ州労裁は、即時解雇は妥当だと言い渡した。判決理由で裁判官は、原告は夜勤中の睡眠を妨げられないようにする目的でナースコールに入居者の手が届かないようにしたと指摘。これは労働契約の主要義務に対する重大な違反であるとの判断を示した。勤続期間が16年と長く年齢も58歳と高いことを考慮しても、即時解雇はやむを得ないとしている。
勤務時間中の睡眠が本人の意志に反するうたた寝であれば重い処分を受けなかったとの見方も付け加えた。最高裁への上告は認めなかった。