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2015/9/16

総合 - ドイツ経済ニュース

エーオンが原発事業の分離を断念、廃炉など自社責任で実施へ

この記事の要約

エネルギー大手の独エーオンは9日、来年1月に予定する在来型発電事業などの分社化の対象から原子力発電事業を除外すると発表した。当初は原発事業も新会社ユニパーに移管し廃炉などのコストも新会社に負担させる計画だったが、新会社が […]

エネルギー大手の独エーオンは9日、来年1月に予定する在来型発電事業などの分社化の対象から原子力発電事業を除外すると発表した。当初は原発事業も新会社ユニパーに移管し廃炉などのコストも新会社に負担させる計画だったが、新会社が経営破たんすると同コストを納税者が負担することになる恐れがあるため、政府はこれを批判。エーオンに同コストの保証義務を課す方向で法改正に乗り出したことから、同社は方針転換を余儀なくされた格好だ。

エーオンは昨年11月、従来型発電(原子力、石炭、天然ガス発電)などの分社化方針を打ち出した。電力卸価格の大幅下落など事業環境の変化を受けた措置で、今後は経営資源を再生可能エネルギー、送電・送ガス網、顧客向けソリューションの3分野に絞り込む。

一方、政府は原発事業者の業績悪化を念頭に、ユニパーが仮に将来、経営破たんすると巨額の納税者負担が発生しかねないと懸念している。現行法では分社化した事業に対する親会社の責任負担期間が5年に制限されており、分社後6年目以降に経営破たんすると政府が負担を肩代わりせざるを得なくなるためだ。政府はそうした事態を回避するため、親会社に無期限の責任を負わせる方向で法改正の準備を進めている。

エーオンはこれを違憲として提訴も辞さない姿勢を示してきたものの、訴訟が長期化すると組織再編計画そのものが宙に浮く恐れがあるため、原発事業のユニパー移管を断念。エーオンの責任下にある新子会社プロイセン・エレクトラ(PreußenElektra)としてグループ内にとどめることにした。原発を非中核事業化するとしたこれまでの方針は堅持する。

プロイセン・エレクトラはエーオンの前身企業の1つであるVEBAの原子力事業のブランド名。来年1月に発足する新プロイセン・エレクトラはエーオンが国内で運営する3原発に対する責任を廃炉と放射性廃棄物の保管も含めて引き受ける。雇用規模2,300人。

ユニパーは予定通り来年1月1日付で発足する。エーオンの従業員1万4,000人が移籍。デュッセルドルフにあるエーオンの現本社を本社として利用する。

エーオンは本社をエッセンに移転する。雇用規模は約4万3,000人に減少する見通し。

エーオンは同日、第3四半期に巨額の評価損を計上することも明らかにした。電力卸売価格の低迷と当局の規制を受けた措置で、10億ユーロのケタ台の後半(50億ユーロ超~100億ユーロ未満)に達するとしている。

低金利が原発各社に追い打ち

ドイツでは計4社が原発を運営しており、これまでに合わせて385億ユーロの引当金を計上した。内訳はエーオンが166億ユーロ、RWEが103億ユーロ、EnBWが81億ユーロ、バッテンフォールが35億ユーロ。4社は引当額が十分だとして、廃炉と放射性廃棄物の最終保管に問題は起きないと主張している。

これに対し連邦経済省の依頼で弁護士事務所ベッカー・ビュットナー・ヘルトが作成した同問題に関する鑑定書は、廃炉と最終保管は過去に経験がないためコストがどの程度に膨らむかが定かでなく、4社の引当金が十分かどうかも判断できないと指摘。また、仮にこれらの企業が経営破たんした場合は、計上した引当金を実際にどの程度、現金化できるかも明確でないとしている。引当金の一部は発電所や送電網など現物資産の形で計上しているためだ。

金利の超低空飛行が続き、上昇のメドが立たないことは原発事業者に追い打ちをかける。原発各社は高い利回りを前提に引当金を計上しており、この点からも積み増しを求められる可能性が高いためだ。各社が前提とする引当金の利回りはRWEが4.6%、エーオンが4.7%、EnBWが4.8%に上る。

ガブリエル経済相は会計事務所ヴァルト・ウント・クライン・グラント・トルントンに作成依頼した廃炉などに関する財務健全性審査(ストレステスト)の結果を近く公表する見通し。15日には業界全体で総額300億ユーロの積み増しが命じられるとの報道があり、電力株は急落した。