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2015/10/7

ゲシェフトフューラーの豆知識

従業員の解雇計画、事業所委に守秘義務はあるか

この記事の要約

企業が人員削減を行う際、労使が交渉して「社会的計画(Sozialplan)」というリストラ計画を策定する。これは希望退職や解雇の対象となる従業員が被る経済的な損失を相殺ないし緩和するための措置で、事業所体制法(BetrV […]

企業が人員削減を行う際、労使が交渉して「社会的計画(Sozialplan)」というリストラ計画を策定する。これは希望退職や解雇の対象となる従業員が被る経済的な損失を相殺ないし緩和するための措置で、事業所体制法(BetrVG)112条に規定されている。では、リストラ計画の策定中にその事実を公表したり従業員に伝えたりしないよう、企業が従業員代表の事業所委員(Betriebsrat)に命じることはできるのだろうか。この問題をめぐる係争でシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労働裁判所が5月に決定(訴訟番号:3 TaBV 35/14)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は製薬大手アストラゼネカの独法人を相手取って、事業所委員会が起こしたもの。同社は2014年8月29日、糖尿病治療薬の販売業務を停止するため同分野の医薬情報担当者(MR)285人を全員、解雇する考えを事業所委に明らかにし、社会的計画の策定に向けた交渉に入るよう促した。その際、リストラの事実が交渉終了前に外部にもれると競争上不利益になるなどとして、同委に対し守秘義務を順守するよう命令。違反した委員に対しては損害賠償を請求する考えを示した。

これに対し事業所委員会は、リストラの対象となる従業員にその事実や交渉経過を伝えなければ交渉に従業員の利害を反映させることができず、任務を遂行できないと判断。同社の守秘義務順守要求を不当として、裁判を起こした。

1審のエルムスホルン労働裁判所は原告・事業所委の訴えを認め、2審のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州労裁も下級審の判断を支持した。決定理由で同州労裁の裁判官は、事業上の秘密が競合企業に伝わることを回避したいというアストラゼネカの利害に理解を示しつつも、従業員にリストラの事実を伝え、従業員と意見交換するという事業所委員会の利害はそれに優越するとの判断を示した。

最高裁への上告は認めなかった。