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2015/10/14

総合 - ドイツ経済ニュース

「原発4社の引当金は十分」=経済相、財務悪化に配慮し玉虫色の判定か

この記事の要約

独連邦経済省は10日、国内の原子力発電事業者を対象に実施した廃炉と放射性廃棄物の保管コストに関する財務健全性審査(ストレステスト)の結果を発表した。ガブリエル経済相は4社がこれまでに積み立てた引当金は十分だと強調。引当金 […]

独連邦経済省は10日、国内の原子力発電事業者を対象に実施した廃炉と放射性廃棄物の保管コストに関する財務健全性審査(ストレステスト)の結果を発表した。ガブリエル経済相は4社がこれまでに積み立てた引当金は十分だと強調。引当金の積み増しを命じない考えを明らかにした。

ドイツでは計4社が原発を運営しており、これまでに合わせて383億ユーロの引当金を計上した。内訳はエーオンが166億ユーロ強、RWEが約100億ユーロ、EnBWが80億ユーロ、バッテンフォールが30億ユーロ強。4社は引当額が十分だとして、廃炉と放射性廃棄物の最終保管に問題は起きないと主張していたが、低金利を受けてコストをカバーできなくなる懸念が浮上。経済省は会計事務所ヴァルト・ウント・クライン・グラント・トルントンにストレステストを委託していた。

ストレステストでは「利率(割引率)」と「廃炉・放射性廃棄物保管コストの上昇」の2つをパラメーターとして計6つのシナリオを想定。コストは最安のシナリオで約290億ユーロ、最高のシナリオで約770億ユーロになると結論づけた。

原発4社が積み立てた383億ユーロについては割引現在価値で475億ユーロになるとしている。475億ユーロは最高シナリオのコスト770億ユーロを大きく下回るものの、ガブリエル経済相はそうしたシナリオはあり得ないと断定。4社が積み立てた額は十分だとの見方を示した。

同経済相の見方に対しては専門家の間から疑問が投げかけられている。ルール・ヴェスト大学のヴォルフガング・イレク教授は『南ドイツ新聞』に、ストレステストは通常、最悪のシナリオにも企業が耐えられるかどうかを調べるものだと指摘。4社の積み立て総額が最悪のシナリオの770億ユーロに達していないにもかかわらず、積み増しを命じないのは問題だと批判した。

同ストレステストをめぐっては、4社が計300億ユーロの積み増しを命じられるとの観測があり、各社の株価は大きく下落していた。4社の財務はドイツの原発廃止前倒し政策を受けてすでに悪化していることから、ガブリエル経済相は引当金積み増しを命じることで経営状況が一段と悪化することを懸念し、今回の「緩い」判断を示したとみられる。

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