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2015/10/28

総合 - ドイツ経済ニュース

企業の景気見通し悪化、来年は成長率1.3%に鈍化=商工会議所

この記事の要約

独商工会議所連合会(DIHK)は22日発表した企業景気アンケート調査レポートのなかで、ドイツの国内総生産(GDP)成長率が来年は実質1.3%となり、今年の1.7%(見通し)から低下するとの予測を示した。企業の現状判断は依 […]

独商工会議所連合会(DIHK)は22日発表した企業景気アンケート調査レポートのなかで、ドイツの国内総生産(GDP)成長率が来年は実質1.3%となり、今年の1.7%(見通し)から低下するとの予測を示した。企業の現状判断は依然として良好なものの、新興国経済の低迷を受けて製造業を中心に景気の先行き懸念が強まっており、DIHKはこれを踏まえ成長が今後鈍化すると判断した。Ifoなどの有力経済研究所は今月上旬に発表した共同作成の「秋季経済予測」で16年成長率を15年と同じ1.8%としたが、企業の声が反映されたDIHKの予測がこれを大きく下回ったことは、経済現場の体感温度がマクロ経済データから得られるよりも冷え込んでいる可能性を示唆している。

DIHKは毎年3回、会員企業を対象に大規模な景気アンケート調査を行っており、今回は8月下旬から10月初旬にかけて実施。2万7,000社強から回答を得た。業種別の内訳は製造が29%、建設が7%、流通が22%、サービスが42%。

同レポートによると、事業の現状を「良い」とする回答は前回調査(初夏)の41%から44%へと上昇し、「悪い」(9%)との差は32ポイントから35ポイントに拡大した(下のグラフ参照)。低金利と石油安、雇用の安定、購買力の上昇を背景に内需が堅調なことが大きく、建設業では東西ドイツ統一後の最高を記録。サービス業も1992年以来の高水準に達した。消費財メーカーの現状判断も良好だ。

一方、景気の先行指標である化学や金属などの中間財メーカーでは現状判断が大きく悪化しており、DIHKは国内外で新規受注が弱含んでいることが反映されたとの見方を示した。

投資財業界は全般的に良好だったものの、自動車業界ではフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題が発覚した9月下旬以降、否定的な回答が急速に増加したという(Ifoが独企業景況感アンケートの一環で調査した自動車業界の景況感は10月も良好で、DIHKのアンケート調査とは異なった結果が出ている)。

今後1年間の事業見通しを「良い」と回答した独企業の割合は前回の26%から23%へと減少した。「悪い」は13%から14%に増加、「良い」と「悪い」の差は13ポイントから9ポイントに狭まった。悪化は製造業で目立ち、特に外需依存度の高い中間財、投資財でその傾向が顕著だ。

景気が好調な米国や欧州向けの輸出は今後も拡大基調が続くものの、新興国低迷で生じる穴を相殺しきれないとの懸念が背景にある。メーカーのみを対象とした質問では国外需要の減少を事業の大きなリスク要因とする回答が前回の38%から48%へと大幅に増加した。ユーロ安のプラス効果が徐々に薄れていることも響く。

投資額を「増やす」との回答(全業界の企業が対象)は前回の27%から26%に減少。「増やす」と「減らす」の差は12ポイントから11ポイントに縮小した。景気見通しの悪化が反映された格好で、特に自動車業界で投資抑制の姿勢が強まった。流通業では小売がけん引車となり、投資に前向きな企業が増えている。