独鉄鋼業界団体シュタールは9日、今年の国内粗鋼生産高見通しを引き下げた。需要が低迷しているうえ、欧州市場への中国製鉄鋼製品の流入が急増しているためで、昨年実績の4,290万トンを「1%上回る」とした従来予測を「横ばいにとどまる」に下方修正した。
中国の鉄鋼業界は過剰生産能力を抱えていることから、鉄鋼製品を安値で輸出している。シュタールによると、同国の今年1-9月期の鉄鋼製品輸出高は1億1,000万トンで、昨年通期の9,300万トンをすでに大きく上回った。そのしわ寄せで、中国製品の輸入が増えた地域からの欧州向けの輸出が増加している。
こうした傾向は数年前から続いており、欧州連合(EU)の圧延鋼輸入高は今年3,110万トンとなり、2012年の2,240万万トンから40%増加する見通しだ。特に中国からの輸入は130%増の600万トンと伸び率が大きい。EUの圧延鋼需要はこの間、5%増にとどまるため、域内市場は供給過剰に陥っている。
EUはこうした事態を受けて今春、中国などの鉄鋼製品の一部に暫定的な反ダンピング(不当廉売)措置を発動したものの、対象品目が限られているため、鉄鋼製品の輸入増に歯止めがかからない状況だ。