同僚への暴行で即時解雇にならないことも

同僚に対して暴行を行った者を雇用主は原則的に即時解雇(fristlose Kuendigung)できる。ただ、暴行の程度が比較的軽い場合は即時解雇できないこともある。ハム州労働裁判所が昨年8月の判決(訴訟番号:13 Sa 576/15)でそんな判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判はトラックの運転手として雇われていた社員が雇用主(企業)を相手取って起こしたもの。雇用主は2014年5月28日付の文書で、遅番の運転手は倉庫のカギを常に閉めるよう命じていたが、原告社員は9月25日の22時から22時半にかけて施錠を怠った。これを同僚が注意したところ、原告はこの同僚の胸元をつかむという暴行に及んだ。

原告は以前に攻撃的な態度と遅刻を理由に警告処分を受けていたこともあり、雇用主は10月9日付の文書で即時解雇を通告。原告はこれを不当として提訴した。

1審のイーザーローン労働裁判所は原告勝訴を言い渡し、2審のハム州労裁も1審判決を支持した。判決理由でハム州労裁の裁判官は、同僚への暴行は原則的に即時解雇の理由となるものの、個々のケースでは暴行の程度を考慮しなければならないと指摘。原告の場合は同僚の胸元をつかんだに過ぎず程度が比較的軽いとして、即時解雇は不当に重い処分だとの判断を示した。また、原告には妻と子供2人の扶養義務があるとして、解雇予告期間を設けた通常解雇(ordentliche Kuendigung)が処分の上限だと言い渡した。最高裁への上告は認めなかった。