農業化学大手の米モンサントは19日、独バイエルが同社買収に向けて行った2度目の提案の受け入れを拒否すると発表した。買収提示額が依然として低く株主に受け入れを推奨できないとしている。ただ、バイエルおよびその他の企業と「建設的な協議」を引き続き続ける姿勢も示しており、バイエルが買収条件をさらに引き上げれば受け入れる可能性がある。
バイエルは14日、モンサントに対する株式公開買い付け(TOB)の条件を引き上げたと発表した。5月のTOB提案に対しモンサントが受け入れ拒否を表明したことに対応した。モンサントをめぐっては独BASFの農業化学事業を買収する方向で交渉しているとの観測が13日に浮上したばかりで、バイエルは迅速に対応した格好だ。
バイエルは5月23日、モンサントを1株当たり122ドルで買収する考えを表明した。これは過去3カ月の加重平均株価を36%上回る水準で、モンサントの企業価値を620億ドルと評価したことになる。
これに対しモンサントは同24日、買収提案はモンサントの企業価値を過小評価しているうえ、財務・規制上のリスクも十分に考慮していないとして、受け入れ拒否の意向を表明した。ただ、バイエルによる買収そのものは拒否しておらず、両社は協議を進めてきた。
バイエルは今回、株式買い取り価格を3ドル引き上げ125ドルとした。モンサントとの協議で得た新たな情報を反映させたとしている。総額は635億ドル。
バイエルは声明で、買い取り価格引き上げの意向を1日に口頭で伝え、9日には正式に提案を行ったことを明らかにした。また、モンサントが懸念を表明していた財務・規制上のリスクについてもすでに説明を行ったと強調した。
具体的には◇買収計画に対し規制当局が事業の部分売却など修正を要求した場合、バイエルはそれに応じる◇規制当局が買収を認めなかった場合は違約金(Reverse Antitrust Break Fee)15億ドルをモンサントに支払う◇買収資金についてはバンクオブアメリカなど計5行からなるシンジケート団から融資を受ける契約が調印待ちの状態になっている――ことを明らかにした。
バイエルは、同社とモンサントは製品分野、地域市場で重複が少なく、買収計画が却下されることはないと強調。15億ドルの違約金支払いを確約するのは却下の可能性がないとみているためだと説明した。
一方、ブルームバーグ通信が消息筋の情報として13日報じたところによると、モンサントは事業規模の拡大に向けて様々な取引の可能性を模索しており、BASFの農業化学事業買収がその1つとして浮上している。BASFから農業化学事業を取得し、その見返りに自社の新株を提供するという内容。交渉は初期段階にあり、実現するかは定かでない。モンサントとBASFは報道内容へのコメントをともに控えている。
『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、モンサントはスイス同業のシンジェンタ買収も視野に入れているもよう。
モンサントは昨年、シンジェンタ買収を目指して失敗。シンジェンタは今年2月、中国の大手化学メーカー中国化工集団(ケムチャイナ)の買収提案を受け入れた経緯がある。ただ、ケムチャイナの買収計画に対しては、米国への直接投資(FDI)が国家安全保障に脅威とならないかを調べる対米外国投資委員会(CFIUS)が待ったをかける可能性を指摘する声もあり、モンサントは望みを捨てていないもようだ。