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2016/7/27

総合 - ドイツ経済ニュース

無差別殺傷事件が1週間で4件、ミュンヘンでは10人死亡

この記事の要約

通行人などを無差別に殺傷する事件がドイツで18日から24日までの1週間に計4件、発生した。それぞれの事件の間に直接的な関連はないものの、犯人が難民ないし移民系の市民だったという点で共通項がある。統計的にみて無差別殺傷事件 […]

通行人などを無差別に殺傷する事件がドイツで18日から24日までの1週間に計4件、発生した。それぞれの事件の間に直接的な関連はないものの、犯人が難民ないし移民系の市民だったという点で共通項がある。統計的にみて無差別殺傷事件は短い期間に相次いで起こりやすいうえ、一部はイスラムテロであることから、注意が必要だ。

18日に起きた最初の事件では、アフガニスタン人として1年前に難民申請した17歳の少年が5人に重傷を負わせた。ヴュルツブルク行きのローカル線に乗り込み、香港人旅行者4人を斧で殴りつけたうえ、逃走中にさらに1人に危害を加えた。警察官に斧で襲いかかろうとしたため、その場で射殺された。

犯人は受け入れ先の施設や家庭では性格が落ち着いた人物とみられ、パン屋で職業訓練を受ける見通しも立っていた。このため事件当初は犯行の動機が謎とされていたが、その後にネット公開された犯行声明ビデオでイスラムテロであることが分かった。犯人は4月の時点でフェイスブックに「偽善的な交友関係を保つよりも憎悪をはっきりと示す方が良い」と書き込んでおり、ドイツで難民生活を送るなかでイスラム過激思想に引き寄せられていった可能性がある。手描きで作ったイスラム過激組織「イスラム国(IS)」の旗が自宅で見つかったものの、単独犯とみられている。

犯人は使用言語や言葉づかいからみてパキスタン人である可能性が高く、身元を偽って難民申請したとみられる。

22日にはミュンヘンでイランとドイツの二重国籍を持つ18歳の男性が銃を無差別に発砲する事件が起き、自殺した本人を含め計10人が死亡した。犯人は学校でいじめられていたうえ、恐怖症とうつ病で治療を受けていた。イスラム過激思想の影響はないものの、無差別殺人に極めて強い関心を示しており昨年夏には、2009年に生徒による無差別殺人事件が起きた西南ドイツの都市ヴィンネンデンを訪問。犯行日は77人が死亡したノルウェー連続テロ事件の5周年に当たっていた。

24日には21歳のシリア人難民が西南ドイツのロイトリンゲンでポーランド出身の45歳の女性をドネルケバップ用の包丁で殺害したうえ、通行人5人にけがを負わせた。女性殺害は男女関係のもつれが原因。犯人は傷害、窃盗、薬物保持で逮捕された経歴を持つ。

ドイツ初のイスラム自爆テロか

同日にはニュルンベルク近郊のアンスバッハで27歳のシリア難民が野外コンサート会場の入り口付近で自爆テロを行った。本人は死亡し、15人が重軽傷を負った。

犯人は14年8月に難民申請を行った。だが、ブルガリアですでに難民登録を行っていたことが分かったため、独当局は1年前に出国命令を出した。

それにもかかわらずドイツにとどまっていたのは、自殺未遂を2度、図ったことから医師が精神不安定という鑑定書を作成し、裁判所の決定で出国命令が凍結されていたためだ。

この決定は今月13日に破棄され、犯人は30日以内に出国しなければならない状況にあった。

犯行はイスラムテロの可能性が濃厚となっている。犯人は携帯電話機に記録されていた犯行声明のなかで、ISの指導者バグダーディーに忠誠を誓うとともに「イスラム教徒を殺害するドイツ人への報復」を予告しているためだ。

犯人の部屋からは電線やガソリン、塩酸など爆弾の原料が見つかっており、捜査当局は犯人がISの一員としてテロを実行したかの調査に乗り出した。現時点では精神不安定が犯行につながった可能性を排除できないものの、ドイツ初のイスラム自爆テロである可能性が高い。

一連の事件を受けてドイツ市民の間には不安が高まっており、警察当局は駅や空港の警戒態勢を強化した。

米国の統計調査によると、無差別殺傷事件が起こると、その後の平均13日間は同様の事件が起こる確率が22%高まる。メディア報道が新たな事件の誘因となりやすいためだ。報道内容が具体的かつ劇場的であればあるほど、潜在的な犯人の自己投影を促進することから、誘発効果が大きくなるという。