独照明大手オスラムの買収を中国企業が断念したもようだ。消息筋の情報としてロイター通信などが報じたもので、中国資本による欧米ハイテク企業の買収に対する風当たりが強まっていることが背景にあるとみられる。
中国資本がオスラム買収を狙っているとの観測は9月末に浮上。同国半導体大手の三安光電は10月中旬になって、オスラムの買収ないし提携に向けて協議を始めたことを明らかにした。このほか、中国の投資会社GSRゴー・スケール・キャピタルも買収交渉を行ったとみられる。
中国企業によるオスラム買収に対しては同社の従業員が反対の意向を表明した。ドイツでは従業員代表の事業所委員会と労組が経営に大きな影響力を行使できることから、従業員の反対は中国2社に対する圧力となったもようだ。これに追い打ちをけるように独経済省のマティアス・マハニヒ政務次官は「従業員と労組の声明を真剣に受け止めている」との声明を発表した。
オスラムは軍用製品も生産しており、その一部は米国の軍事産業にも供給されている。そうしたケースでは米国への直接投資(FDI)が国家安全保障に脅威とならないかを調べる対米外国投資委員会(CFIUS)が厳しく審査し、政府が買収を承認しないことが多い。蘭フィリップスの照明子会社ルミレッズをGSRが買収する計画はCFIUSが強い懸念を示したことからとん挫。半導体製造装置の独アイクストロンを中国の福建芯片投資基金(FGC)が買収する計画もCFIUSの勧告を受けてオバマ大統領が拒否権を発動したことから破談となった。