運送会社の運転手が荷物の配達中に駐車違反を行うことは珍しくない。駐車可能なスペースが配達先の近くにないことはよくあるためだ。正規の駐車スペースを探して荷物を届けていたのでは時間の無駄になることもあり、雇用主が反則金の支払いを引き受けるケースもある。この場合、雇用主が支払う反則金は被用者の賃金の一部として所得税などの課税対象になるのだろうか。この問題をめぐる係争でデュッセルドルフ財政裁判所が1月に判決(訴訟番号:1 K 2470/14 L)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は小包配達事業者が税務署を相手取って起こしたもの。同社は駐車禁止ゾーンや歩行者ゾーンに配達員が駐車することを複数の都市から特例として(有料で)認められていた。こうした特例が認められていない自治体では駐車違反の反則金を同社が支払っていた。
これに対し所管の税務署は、同社が支払いを引き受けた反則金は駐車違反を行った配達員に対する賃金に該当すると主張。当該配達員の課税所得をその分だけ増やそうとしたため、これを不当として提訴した。
デュッセルドルフ財政裁はこの訴えを認める判決を下した。判決理由で裁判官は、配達業務で行われた駐車違反の反則金を原告が引き受けているのは業務上の利害に基づくものであり、賃金の性格を持っていないと指摘。原告が支払った違反金を所得税の課税対象とすることは不当だと言い渡した。
今回の係争は最高裁による判例が定まっていない問題が争点となっていることから、裁判官は連邦財政裁判所(最高裁)への上訴を認めている。