1990年代まで世界をリードしていた日本の総合電機産業が衰退の一途をたどっていることについて、17日付の独有力紙『南ドイツ新聞(SZ)』が分析記事を掲載した。
「スターからゾンビへ」と題した同記事で執筆者のクリストフ・ナイトハルト記者(東京特派員)はまず、ソニーの「トランジスタラジオ」や「ウォークマン」など日本発のかつての輝かしい製品を挙げたうえで、「現在は画期的な製品がカリフォルニアと韓国、台湾で開発されている」と指摘。「日本の経営者が注目を浴びるのは失敗やスキャンダルで謝罪会見を開くときがほとんどだ」と嘆いた。
そのうえで、「日本の賃金はソニーが世界市場を支配していた頃から上昇しておらず、日本のトップブランド製品は現在もコストパフォーマンスが悪くない」と指摘。日本の電機産業が衰退したのは、硬直した企業の構造とヒエラルキーが原因だと強調した。
「大手企業の現在の役員は入社以降ひたすら命令に従って出世街道を歩いてきた年配の男性だ。経歴に傷がつくことを恐れているため、(ソニー創業者などの)先行世代と異なり大胆な冒険をしない」というのが同記者の分析だ。
この見方が正しい根拠として、ソニーからの分社化で「本社の縛り」から解放されたたテレビ事業が長期の赤字から黒字転換を果たしたことや、シャープが鴻海精密工業によって買収されるとわずか数カ月で黒字転換し、「ゾンビからトップブランドに返り咲いた」ことを挙げている。
記者は最後に、ソフトバンクの孫正義社長や楽天の三木谷浩史会長のように自ら起業して成功した人物や、セイコーエプソンの碓井稔社長のようにエスタブリッシュメント企業を大胆に改革し、日本の電機メーカーの主流である「何でも屋」路線から決別した経営者もいることを指摘して記事を締めくくっている。