不用意な刑事告発で解雇は妥当

勤務先に対し不用意な告発を行った被用者を解雇することは妥当――。そんな判断を最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年12月の判決(訴訟番号:2 AZR 42/16)で下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は単科大学で労働・社会法分野の授業を担当する弁護士が同大学を相手取って起こしたもの。

同大学は2012年3月、法律の定めに基づいて複数の授業の査定を行った。査定対象には同弁護士の授業も含まれていた。

同弁護士はこれが、他人を貶めることを目的とする個人情報の収集を禁じた連邦データ保護法(BDSG)44条1項の規定に違反するとして6月に刑事告発を行った。検察当局は同月中に捜査を中止。同弁護士はこれを不当として抗告したものの、連邦検察庁に却下された。また、連邦労働・社会省も13年12月18日付の文書で、同大の授業の査定に違法性はなかったとの判断を示した。

同大学はこれを受けて、解雇予告期間を設定した通常解雇を同弁護士に通告。同弁護士はこれを不当として、解雇取り消しを求める裁判を起こした。

原告は1審と2審で敗訴。最終審のBAGも下級審判決を支持し解雇は妥当だとの判断を示した。判決理由でBAGの裁判官は、刑事告発に含まれる価値判断は言論の自由が適用される領域だとしながらも、原告には契約先である大学(被告)の利害を配慮することが民法典241条2項の規定により義務づけられていると指摘。原告は弁護士という職業柄、被告が行った授業の査定にデータ保護法上の問題がないことを認識し得たにも関わらず刑事告発を行っており、民法典241条2項の配慮義務違反だとの判断を示した。

原告はまず、事業査定の是非の学内での検証を呼びかけるべきだったにもかかわらず、そうした手続きを経ずに、査定には対象者を貶める意図があったと安直に結論付けて刑事告発を行った、というのが裁判官の見方だ。

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