メルセデス車にも違法ソフト搭載疑惑、陸運局が検査へ

独ダイムラーの乗用車ブランドである「メルセデス」のディーゼル車に排ガスを不正に操作するソフトウエアが搭載されているとの疑惑が浮上している。『南ドイツ新聞(SZ)』などが報じたもので、事態を重くみたアレクサンダー・ドブリント交通相は13日、同社の代表を交通省内の排ガス不正問題調査委員会に急きょ召喚し、事情を聴取した。メディア報道によると、同相は疑いが持たれている車両を対象に新たな検査を行うことを傘下の連邦陸運局(KBA)に命令したもようだ。不正の事実が仮に確認されると、フォルクスワーゲン(VW)グループに次いで2社目となる。

疑惑の対象となっているのは「OM642」「OM651」というエンジンを搭載した、2008年から16年にかけて生産された車両。欧州と米国で計100万台以上が販売された。

SZ紙と公共放送NDR、WDRがシュツットガルト区裁判所の捜査令状をもとに報じたところによると、両エンジンには台上試験と路上走行の違いを認識したうえで、台上試験でのみ排ガス浄化装置が適切に働くように操作するソフトが搭載されている疑いがある。仮に違法性が確認されれば、当該車両の走行が禁止される恐れがある。

ダイムラーは14日の声明で、違法ソフト搭載の容疑を明確に否認した。

交通省はVWの排ガス不正問題が2015年秋に発覚したことを受けて、日本車を含む独内外のメーカーのディーゼル車53モデルを対象にテストを実施した。昨年4月に発表された調査報告によると、欧州連合(EU)ルールの盲点を突いて台上試験に合格するようにしていた車両が計22モデルあったものの、台上試験と路上走行の違いを認識して台上試験でのみ排ガス浄化装置が適正に働くよう設定した違法ソフトの搭載車両は見つからなかった。

EUではエンジンを保護するために外気温が低い場合は排ガス浄化装置が作動しないようにすることが認められている。これら22モデルでは屋内で行う台上検査の際は室温が低くないことから排ガス浄化装置が作動するものの、気温が低い時に屋外を走行すると作動せず、許容値を大幅に上回る窒素酸化物(NOx)を排出。屋外走行時のNOx排出量が許容上限値を10倍以上、上回るモデルも5種類あった。

ドイツ車ではアウディ、メルセデス、オペル、ポルシェ、VWの合わせて約63万台(欧州全体)が該当しており、各社は当局の指示を受けて自主的なリコールの実施を確約した。

メルセデス車を対象とする新たな検査で違法ソフトの搭載が見つかれば、KBAは前回の検査で見落としていた可能性がある。

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