ドイツ銀の二大株主を欧州中銀が調査へ

欧州中央銀行(ECB)がドイツ銀行の二大株主である中国の複合企業・海航集団(HNAグループ)とカタールの投資家を対象に株主としての適性をチェックする調査を実施するもようだ。『南ドイツ新聞』がECBの銀行監督部署内の情報として報じたもので、場合によっては両株主から議決権を取り上げたり制限する可能性もあるという。関係当局・企業は報道内容へのコメントを控えている。

HNAは2月、低迷していたドイツ銀株3.04%を取得して資本参加した。その後、出資比率を引き上げ現在は9.9%を保持している。カタールの投資家の出資比率は公式情報では6.1%にとどまるものの、オプション取引を通してHNAと同程度の株式を保有している。

両株主はドイツ銀の監査役会に役員を送り込んでいる。また、株主総会の出席者が少ないことから、法律の規定に反して共謀すると(acting in concert)、重要議決の否決など総会の決定に極めて大きな影響力を行使できる。

同紙によると、ECBは両株主を対象に◇前科がないか◇犯罪行為を行っていないか◇ドイツ銀株の取得費用をどこから調達したのか◇ドイツ銀が経営破たんの危機に直面した場合、追加出資するだけの資金のゆとりがあるか――を調査する。

株主の適正調査は原則的に出資比率が10%以上の投資家を対象に行われる。両株主はこの事情を踏まえて出資比率を10%弱にとどめているものの、株主総会の決議で共謀して保有株以上の影響力を行使できるなどのケースでは10%未満でも調査の対象となり得る。

両株主は5月の株主総会の決議で全く同一の行動を取っており、歩調を合わせた疑いが持たれている。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、ドイツ銀行の元マネージャーで現在カタールのコンサルタントとして働くミケーレ・ファイソーラ氏にはHNAと接触したとの噂が金融業界内で流布している。また、M&A分野の有力弁護士であるヤン・バイエル氏は両株主が保有株以上の影響力を行使するために共謀しているとしてフランクフルト地方裁判所に提訴したという。

HNAは多くの中国企業と同様に、組織の透明性が低く、誰がオーナーなのか、あるいはドイツ銀への出資の本当の狙いが何であるのかが明らかになっていない。政府に近い企業とみられている。

カタールの大株主は同国の元首相とその従兄で、複数の投資会社を通してドイツ銀に出資している。カタールはイスラムテロ組織への支援疑惑が持たれており、米財務省は2014年、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスに資金を供給していることを確認した。アルカイダにも資金を提供しているとみられ、ドイツ銀の配当がテロ資金に流用されている可能性を排除できない状況だ。

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